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高収益市場への参入は
成功すれば果実は大きい
既存企業の業績から判断して、参入しやすいが平均的な利益しか得られない市場を狙うのと、参入が難しいが平均以上の利益が得られそうな市場を狙うのとでは、どちらが賢明な戦略といえるだろうか。
どちらの選択が正しいかは判然としないが、ほとんどの企業が、既存企業が軒並み大きな利益を上げている業種に参入する道を選ぶに違いない。新規参入を狙う企業は手強い既存企業と対決しなければならないとわかっているが、利益率が高いため、そのような市場には蜜に群がるハチのように企業が集まってくる。
しかし、新規参入企業が高収益市場で成功するのはきわめて難しい。そのことは頭にないようだ。そうでなければ、このような業種に企業が殺到して過当競争が起こり、利益率も全体的に落ち込んでいるはずである。
ハーバード・ビジネススクール教授のマイケル・ポーターが指摘しているとおり、既存企業の利益率が比較的高い理由は、「サプライヤーやバイヤーとの交渉力」「代替製品の欠如」「有利な競争条件」、特に重要な「参入障壁」といった特殊事情があるからだ[注1]。
魅力のない市場は、やはり魅力に乏しいとしか言いようがないが、魅力的な市場というのは複雑怪奇なものである。市場リーダーによって参入障壁が築かれているため、いくら望んでも、容易に参入できない。
高収益市場への参入を金で買えると考えるCEOもいるに違いない。しかし、M&Aは多くの危険をはらんでいる。買収企業は、被買収企業の現在と将来の利益を創造するためのコストを結果的に負担することになるからだ。買収企業が被買収企業の株式を買い取る際に支払う買収プレミアムは平均約30%であり、その過程で買収企業の株主が損失を被ることも多い。
そこで、次のような疑問が生じる。魅力的な市場に参入し、利益を上げられる方法はあるのだろうか。戦略に関する研究は数多くあるが、その答えを見つけることはできなかった。
そこで我々は、1990年から2000年にかけて、既存企業のROA(総資産利益率)を基準にアメリカで特に利益率の高い業種を選び、これらの市場への参入に成功した企業について調査することにした(囲み「今回の調査について」を参照)。