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マーケティング・マインドを醸成するには
フィリップ・コトラーがマーケティングに興味を抱き始めたきっかけは、経済学を修めるうちに「はたして経済学が産業に、そして企業にとって役に立つものだろうか」という疑問を持ち始めたことだったという。
1960年当時、価格理論一つにしても、需要曲線を引き上げる具体的な要因に関する考察は乏しく、多くはこれを抜きに語っていた。コトラーはこのような状況を見て、経済理論を企業活動に資するものへと昇華させたいと強く意識するようになった。そしてハーバード大学で数学、シカゴ大学で行動科学を研究した。
そして67年、こうして最初の著書『マーケティング・マネジメント』[注1]が誕生した。本書はマーケティングのバイブルとして、学生はもちろん、ビジネスマンや研究者まで幅広く支持されている(囲み「顧客志向はクロス・ファンクションを求める」はその一部抜粋)。
その内容は、経済理論、数学、組織論や行動科学を基本としており、いまでこそ当たり前だが、当時に計量経済学のアプローチを採用したことは、まさにマーケティングに新しい境地を拓いたといえる。
また71年──残念ながら邦訳されてはいないが──Marketing Decision Making[注2]を上梓しているが、これも高等数学を駆使した、まさしくマーケティングを「科学」した一冊である。コトラーによれば、本書が自身最初の書籍となるはずだったそうだ。現在、彼の著作は40冊以上に及び、主要な学術誌への寄稿は100を超える。80年代には、日本企業の経営手法を研究した論文[注3]を発表している。
これまでマーケティングは、社会学、心理学、人間生態学など、さまざまな視点から語られ、はたして学問の対象とすべきなのかすら判然としなくなってきた。しかし、このように学際的に議論されるようになったのは、アイザック・ニュートンが物理学という理論体系の基礎を築いたように、コトラーがマーケティングの体系化を試みたことにその出発点があるといえよう。
現在もイリノイ州エバンストンのノースウェスタン大学ケロッグ・スクールにおいて、インターナショナル・マーケティング分野で教鞭を執るコトラーに、いまなぜマーケティングを再発見しなければならないのか、また次なる方向性はいかなるものかを聞く。
DHBR(以下色文字):日本企業のみならず、企業のほとんどがその利益の大半を法人市場で稼ぎ出していますが、どうもマーケティングというのは、消費財ビジネスのものという意識がそこかしこで見られます。