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クチコミの真の価値を測定する
顧客リレーションシップを管理する技術は、相当高度化している。データベースを使えば、詳細なデモグラフィック情報(人口統計上のデータ)のほか、顧客一人ひとりの購買金額や購買頻度を引き出せる。統計モデルを使い、顧客一人ひとりについて、次の買い物のタイミングだけでなく、どのチャネルで何を購入するかまでも予測できる。
これらのデータを利用すれば、顧客一人ひとりの潜在的なCLV(顧客生涯価値:customer lifetime value)を推定するだけでなく、彼ら彼女らに接触すべきか、それはいつで、どのように接触すれば、顧客価値を最大化できるかがわかる。
しかし、ベイン・アンド・カンパニーのフレデリック F. ライクヘルドがHBR誌に寄稿した論文[注]のなかでも述べられているように、顧客価値はその購買行動だけで決まるわけではない。
さまざまな要素が複雑に絡み合う時代にあって、顧客が自社をどのように感じ、それを周囲にどのように伝えるかは、実際の購買行動と同じくらい売上げと利益に影響する。実際、営業担当者に代わって顧客に自社を売り込んでもらおうと、あの手この手で働きかけている。
携帯電話会社のスプリントPCSは、顧客がだれかを紹介するごとに20ドル相当の割引を与え、その紹介客が実際に加入すれば、その人にも10ドル相当のサービス割引を提供している。またインターネット証券のスコットレードでも、紹介した人とされた人の両方に、1回7ドル相当の取引手数料を3回分無料にしている。
したがって、真実の顧客価値を知りたいのであれば、その顧客が「儲かる新規顧客」を呼び寄せる能力を測定し、その価値を考慮に入れることが望ましい。しかしほとんどの企業が、顧客の「紹介力」を測定するといっても、せいぜい紹介する意思があるかどうかを探る程度である。とはいえ大局的には、これは間違った基準とはいえない。ライクヘルドが指摘しているように、利益増と正の相関があるからだ。
問題は、だれかを紹介する意思があったとしても、ただの好意で終わってしまうことだろう。通信会社および金融サービス会社のマネジャーたちと一緒に、我々はこれら2社の顧客群、すなわち通信会社の顧客9900人と金融サービス会社の顧客6700人に対し、これらの企業のサービスをクチコミする意思があるかどうかをインタビューし、その行動を追跡調査した。また、このように紹介を受けた潜在顧客が、ある期間においてどのように行動するのかについても追跡した。
「この企業をだれかに勧める意思がある」と答えた人の割合は、どちらの企業でも高かったが、実際にそうした人ははるかに少なかった。金融サービス会社の顧客の68%が、クチコミするつもりがあると答えたにもかかわらず、実際に行動に移した人はわずか33%にすぎず、また通信会社でも、顧客の81%がこの会社を他人に勧めると答えたが、実際には30%の人しか、そうしなかった。