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なぜプロジェクトの打ち切りは難しいのか
筆者は多くの組織に助言を行ってきたが、そのたびにほぼ例外なく同じ問題に直面する。あまりに多くのプロジェクトが進行しているのに、本当に意義のあるプロジェクトはごくわずかしかない、という問題である。
あるグローバルな非営利組織のCEOは、半ば冗談、半ばいら立ち交じりに「従業員は900人なのに、進行中のプロジェクトは1200件以上ある」と話してくれた。「どうかしているだろう。でも、人はプロジェクトを立ち上げるのが好きだ。ワクワクするし、進展しているように見えるからね。プロジェクトを打ち切るのは気まずい。失敗したみたいに思えるから」
このエピソードはけっして珍しい話ではない。筆者が携わってきたあらゆる業界──グローバル消費財ブランドや大手製薬企業から金融機関、大規模インフラ企業、さらにはビジネススクールに至るまで──で同じパターンが見られる。
銀行は競合する何百ものデジタル施策を立ち上げ、消費財企業は数少ないイノベーション人材に何十ものローンチプロジェクトを「優先課題」として担当させる。ヘルスケア・ライフサイエンス企業は、すでに有用性が失われた研究やコンプライアンスプログラムをいつまでも続けている。
ただし、こうした問題のなかには強力な機会も潜んでいる。組織が勇気を持って付加価値の高い少数の施策に集中すれば、驚くべき成果が期待できるのである。エネルギーと予算と人材を分散させず、本当に重要なプロジェクトに集中させれば、成果が加速し、士気が高まり、目的意識を共有している感覚が強化される。
筆者の経験から言えば、大半の組織は明日にでも、何の悪影響も生じさせることなく、進行中のプロジェクトを50%削減できる。さらに、70%削減することで、より迅速、より集中的、より効果的なビジネス展開が可能になるケースさえある。
にもかかわらず、組織はプロジェクトをやめようとしない。筆者が近く出版予定のPowered by Projects: Leading Your Organization in the Transformation Age(未訳)のために2024年6月に実施した調査によれば、プロジェクトの見直しを毎月行っている組織はわずか8%だった。プロジェクトを中止することが「たまにしかない」組織が44%、「滅多にない」は26%、「一度も中止したことがない」組織も7%あった。
プロジェクトを始めることにばかりこだわる姿勢は、非効率であるだけでなく、戦略的に危険をはらんでいる。今日のプロジェクトエコノミーにおいては、価値は主に施策や変革を通じて生み出されるが、それは「プロジェクトの数が多いほどよい」という意味ではない。プロジェクトのポートフォリオが膨れ上がるとリソースが分散し、意思決定が遅れ、本当の意味で成果を出せるプロジェクトに集中できなくなる。
この新たな現実において成功を収めるための第1のルールは単純なものだ。「もっとプロジェクトを中止せよ」である。
ただし、問題がある。プロジェクトの数を減らすべきことは誰もが知っているのに、実際にその方法を理解している人がほとんどいないことだ。政治的な問題やトレードオフ、気まずい対話を恐れて、負荷がかかりすぎる状況を放置しているうちに、集中力と推進力は静かに失われていく。
プロジェクトを打ち切る習慣を築く
プロジェクトの立ち上げは楽しいものだ。キックオフはエネルギーを生み、注目を集める。一方、プロジェクトの打ち切りは静かで、気まずく、政治的な意味合いも生じる。組織が過剰な負荷を抱えがちになるのは当然のことで、問題を認識しているにもかかわらず、打ち切りの必要性が明白なプロジェクトを止められずに苦労する事情も理解できる。






