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戦略が機能してこそ山は動く
「有能な人間の常として、優れた企画ならば山をも動かすはずであると思っていただろう。だが、山を動かすのはブルドーザーである。企画は、しょせんそのブルドーザーをどこで動かすべきかを示すだけである。企画ができ上がったからといって、仕事が終わったわけではないことを知らなければならない」。これはピーター F. ドラッカー「自己探求の時代」(DHBR2010年6月号)の一節。何ともハッとさせられる指摘だと思いませんか。
「戦略を立案せよ」と言われると、ついパワーポイントやスプレッドシートを立ち上げてしまう。いや、立ち上げるのはよいのですが、でき上がった資料を眺めて悦に入り、これで望ましい未来が手に入ったかのような錯覚を起こしてしまう。皆さんも大なり小なり心当たりがあるのではないでしょうか。
しかし実際には、戦略は実行されてこそ意味を成すもの。事前に立てた計画がいくら素晴らしくても、それが従業員や投資家に適切に伝わり、すべての歯車がうまく噛み合って動かなければ画餅で終わってしまいます。では、戦略を首尾よく実行し、実際に成果を挙げるためには何が必要なのか。今号の特集「戦略を機能させる」は、この問いを出発点として企画しました。
特集1本目「戦略を機能させ、企業価値を高める法」は、企業価値を持続的に高めるために不可欠な「戦略的適合」に主眼を置いた論考です。表計算ソフト上で財務目標を逆算するだけの「スプレッドシート戦略」から抜け出し、戦略の本質的要素を整合させるための要諦が掴めます。
2本目「戦略はリーン思考で策定せよ」は、戦略的意思決定のプロセスに「リーン」の発想を取り入れることで、無駄を省いてよりスピーディに成果を挙げるための方法論を詳述しています。
続く3本目「戦略は一枚のビジュアルにまとめなさい」は、従業員や投資家などに対して戦略を効果的に視覚化して伝えることの重要性を説いたうえで、その目的を効果的に達成するために注意すべきデザイン上の5つのルールを紹介しています。
そして特集4本目「サンリオはキティ頼みを脱け出し、グローバル戦略を遂行する」では、積極的な外部人材登用と組織風土改革でV字回復を遂げたサンリオ社長の辻朋邦氏(同氏の名字は正しくは一点しんにょう)に、戦略実行の舞台裏について聞きました。
最終的に戦略を実行するのは人。組織の力を結集して大きな山を動かす際に、今号が何らかの足掛かりになれば幸いです。
(編集長 常盤亜由子)