部下の防御反応に、リーダーはどう対処すべきか
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サマリー:部下の過度な依存や攻撃性といった問題行動に直面すると、つい人格的な欠陥だと考えてしまいがちだ。しかしそれらは、本能的な「脅威反応」である可能性がある。これらは幼少期に形成された生存戦略であり、心理的安全性が低い環境で無意識に発動する防衛メカニズムなのだ。本稿では、職場で見られる6つの脅威反応の正体と、リーダーが心理的安全性を高めてそれらを解消するための具体的な手法を解説する。

部下の問題行動は「脅威反応」かもしれない

「闘争・逃走・凍結」という言葉は、脅威に対する体の本能的な生存反応を表すものとして広く理解されている。しかし、一部の臨床家や研究者は、脅威反応には6つのタイプがあると認識している。すなわち、闘争、逃走、凍結、迎合/宥和(「へつらい」ともいわれる)、依存(愛着/助けの懇願)、放棄(崩壊/諦め)だ。これらの脅威反応は、安全と危険に関する幼少期の経験に由来するが、成長しても消えるものではない。それは深く組み込まれた生存戦略であり、成人後にも無意識のうちに持ち越される行動パターンだ。

 そして当然ながら、私たちはこうした反応を職場にも持ち込む。

 職場は、私たちが経験する環境の中でも特に感情的な負荷の高い場所の一つだ。締め切り、組織内の政治、業績評価、重要な会議などは、無意識のうちに過去の脅威や排除の経験を呼び起こす。また、職場は無作為に選ばれる場所ではなく、形成期に刻まれた影響や経験(勇気づけられた経験も痛みを伴う経験も)を反映し、強化する文化に惹かれることが多い。心理的安全性が低いと感じられる環境では、こうした脅威反応が再活性化されることがある。それは私たちが機能不全に陥っているからではなく、人間であるからに他ならない。

 グローバルな製品チームを率いる経営幹部のジェームズ(仮名、以下同)を例に挙げよう。彼は筆者に、チーム内の2人の従業員に対する不満を語った。エドガーは、ジェームズいわく「過度に依存的」で、たえず安心を求め、指示を仰ぎ、小さな問題を危機へとエスカレートさせる。メリンダは、ほぼすべての会議に戦闘態勢で現れ、強硬に自分の立場を主張し、妥協を拒む。ジェームズにとって彼らの行動は、性格上の欠点に見えた。一人は過度の依存で、もう一人は容赦ない攻撃性で彼を疲弊させるのだ。

 ジェームズは、これらの行動が人格的な欠陥ではなく、脅威反応である可能性を認識していなかった。エドガーの行動は、権威を持つ人にしがみつくことで安全を確保しようとする「愛着/助けの懇願」反応に類似しており、メリンダの行動は、脅威を力で排除しようとする「闘争」反応として理解できる。

 いずれも、自分をさらけ出すことが危険だと感じられる環境への適応だ。その行動は、混乱を起こすかもしれないが、より高い心理的安全性が役に立つというシグナルでもある。エイミー・エドモンドソンによれば、心理的安全性とは「チームが対人関係においてリスクを負っても安全であるという共有された信念」であり、率直に発言し、間違いを認め、恥をかかされることや報復されることを恐れずにアイデアを共有することを可能にする基盤だ。

 幸いなことに、こうしたダイナミクスに対してあなたは無力ではない。脅威反応を人格的な欠陥ではなく、適応戦略として理解することで、それらを、自分を偽らないことが安全ではないと感じた時に現れる防衛メカニズムとして認識できるようになる。

 あなたが部下のセラピストになるべきだとか、過剰に迎合すべきだという意味ではない。すべての問題行動が脅威反応に由来するわけでもない。しかし今日の組織において、優れたリーダーシップとは、情緒的に複雑な状況を認識し、人々がより建設的な選択をできるよう導き、フィードバックを提供することである。適切な認識とスキルを持つことで、防衛パターンを特定し、従業員がそれらに依存せずに最良の思考、率直さ、創造性を発揮できる環境へと転換することができる。

脅威反応を読み解く

 脅威反応と思われる行動に直面すると、リーダーはしばしば、その行動を意図的なもの、あるいは弱さの表れと判断し、その従業員を「修正」しようとするかもしれない。受け入れがたい行動はけっして容認すべきではないが、それを理解することは許すことではない。防衛的行動は、あなたが心理的安全性を高める機会となる。

 6つの脅威反応が、職場でどのように現れ、マネジャーはどのようにしてそれらを無意識に強化してしまうか、そしてより安全で生産的な状況をつくるために何をすべきかを以下で解説しよう。

1. 闘争

 組織における闘争反応は、会議での攻撃的な態度、同僚との口論、フィードバックに対する過剰防衛として現れる。他者の発言を遮り、対立をエスカレートさせ、自分のアイデアを強引に押し通そうとするメンバーもいるかもしれない。