-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
部下の問題行動は「脅威反応」かもしれない
「闘争・逃走・凍結」という言葉は、脅威に対する体の本能的な生存反応を表すものとして広く理解されている。しかし、一部の臨床家や研究者は、脅威反応には6つのタイプがあると認識している。すなわち、闘争、逃走、凍結、迎合/宥和(「へつらい」ともいわれる)、依存(愛着/助けの懇願)、放棄(崩壊/諦め)だ。これらの脅威反応は、安全と危険に関する幼少期の経験に由来するが、成長しても消えるものではない。それは深く組み込まれた生存戦略であり、成人後にも無意識のうちに持ち越される行動パターンだ。
そして当然ながら、私たちはこうした反応を職場にも持ち込む。
職場は、私たちが経験する環境の中でも特に感情的な負荷の高い場所の一つだ。締め切り、組織内の政治、業績評価、重要な会議などは、無意識のうちに過去の脅威や排除の経験を呼び起こす。また、職場は無作為に選ばれる場所ではなく、形成期に刻まれた影響や経験(勇気づけられた経験も痛みを伴う経験も)を反映し、強化する文化に惹かれることが多い。心理的安全性が低いと感じられる環境では、こうした脅威反応が再活性化されることがある。それは私たちが機能不全に陥っているからではなく、人間であるからに他ならない。
グローバルな製品チームを率いる経営幹部のジェームズ(仮名、以下同)を例に挙げよう。彼は筆者に、チーム内の2人の従業員に対する不満を語った。エドガーは、ジェームズいわく「過度に依存的」で、たえず安心を求め、指示を仰ぎ、小さな問題を危機へとエスカレートさせる。メリンダは、ほぼすべての会議に戦闘態勢で現れ、強硬に自分の立場を主張し、妥協を拒む。ジェームズにとって彼らの行動は、性格上の欠点に見えた。一人は過度の依存で、もう一人は容赦ない攻撃性で彼を疲弊させるのだ。
ジェームズは、これらの行動が人格的な欠陥ではなく、脅威反応である可能性を認識していなかった。エドガーの行動は、権威を持つ人にしがみつくことで安全を確保しようとする「愛着/助けの懇願」反応に類似しており、メリンダの行動は、脅威を力で排除しようとする「闘争」反応として理解できる。
いずれも、自分をさらけ出すことが危険だと感じられる環境への適応だ。その行動は、混乱を起こすかもしれないが、より高い心理的安全性が役に立つというシグナルでもある。エイミー・エドモンドソンによれば、心理的安全性とは「チームが対人関係においてリスクを負っても安全であるという共有された信念」であり、率直に発言し、間違いを認め、恥をかかされることや報復されることを恐れずにアイデアを共有することを可能にする基盤だ。
幸いなことに、こうしたダイナミクスに対してあなたは無力ではない。脅威反応を人格的な欠陥ではなく、適応戦略として理解することで、それらを、自分を偽らないことが安全ではないと感じた時に現れる防衛メカニズムとして認識できるようになる。
あなたが部下のセラピストになるべきだとか、過剰に迎合すべきだという意味ではない。すべての問題行動が脅威反応に由来するわけでもない。しかし今日の組織において、優れたリーダーシップとは、情緒的に複雑な状況を認識し、人々がより建設的な選択をできるよう導き、フィードバックを提供することである。適切な認識とスキルを持つことで、防衛パターンを特定し、従業員がそれらに依存せずに最良の思考、率直さ、創造性を発揮できる環境へと転換することができる。
脅威反応を読み解く
脅威反応と思われる行動に直面すると、リーダーはしばしば、その行動を意図的なもの、あるいは弱さの表れと判断し、その従業員を「修正」しようとするかもしれない。受け入れがたい行動はけっして容認すべきではないが、それを理解することは許すことではない。防衛的行動は、あなたが心理的安全性を高める機会となる。
6つの脅威反応が、職場でどのように現れ、マネジャーはどのようにしてそれらを無意識に強化してしまうか、そしてより安全で生産的な状況をつくるために何をすべきかを以下で解説しよう。
1. 闘争
組織における闘争反応は、会議での攻撃的な態度、同僚との口論、フィードバックに対する過剰防衛として現れる。他者の発言を遮り、対立をエスカレートさせ、自分のアイデアを強引に押し通そうとするメンバーもいるかもしれない。
これは粘り強さや自己主張と誤解されることがあるが、実際には、本人が脅威を感じ、生き残るためには力によって自己を守る必要があると信じていることの表れである場合が多い。マネジャーは、強引な性格を評価したり(「彼はやり手だ」)、攻撃性に対して強権的に応じたりすることで、意図せずこの反応を強化してしまうことがある。それは権力闘争が深まるだけだ。
ジェームズのチームの「闘争的な」メリンダは、その典型例といえる。彼女はチームの議論をたびたび対決に変え、ジェームズもそれに巻き込まれていた。だが彼は、メリンダの行動を、支配欲ではなく闘争反応と捉え直し、戦略を変えた。彼女と同じテンションで応じるのではなく、議論のペースを落とし、好奇心を持って質問し、彼女が他者のアイデアを取り入れた場面を強調した。また、チームがメリンダをどう認識しているかを率直に話し合った。メリンダは次第に、「勝つこと」に固執しなくても意見が聞き入れられると実感し、協働的になった。
安全性を高める方法:
・冷静に好奇心を示す。対立が生じた時には声のトーンを落とし、オープンエンドな質問を投げかける。「これについて強い意見を持っているようですね。あなたにとって何が最も重要か、教えてくれますか」
・対立を協働の機会と捉える。衝突を、競争ではなく、共同で解決すべき問題として扱う。「私たちはどちらもよい結果を望んでいます。互いの視点を組み合わせる方法を探りましょう」
・闘争より協働を評価する。従業員がアイデアを統合したり、うまく妥協したりしたことを公に称賛する。「今回の議論で最もよかったのは、双方が相手の考えをもとに発展させた点です」
2. 逃走
逃走反応は、注目を集めないようにするために引きこもる時に現れる。機会を辞退する、会議で発言をせず対立を避ける、議論が白熱すると関わらなくなるなどだ。これらはすべて心理的安全性が不十分であることを示している可能性がある。発言すれば罰や辱めにつながると感じると、姿を消すほうが安全だと判断するのだ。マネジャーは沈黙に気づかず、それをディスエンゲージメント(意欲の消失)や能力不足と解釈したり、沈黙を埋めようと一方的に話し続けたりして、この反応を強めてしまう。
安全性を高める方法:
・発言が少ない人にも機会を提供する。部下を窮地に立たせることなく、優しく発言の場を与える。「ジョーダンの視点も参考になると思います。よかったら共有してくれませんか」
・発言や貢献を温かく評価する。アイデアが未熟でも、その価値を強調する。「よい出発点ですね。そこから一緒に考えましょう」
・心理的安全性の規範を設定する。会議開始時にこう伝える。「目的はアイデアを出すことで、それを評価することではありません。探究心を持ち続けましょう」
3. 凍結
凍結反応は、マヒとして現れる。決断できない、前に進めない、会議で反射的に「わかりません」と答えるなどだ。表情が無表情になる、延々とためらう、分析マヒに陥るといった場合がある。これは評価されることを極度に恐れ、失敗するより何もしないほうが安全だと感じているサインかもしれない。マネジャーは、即時の回答を強く求めたり、ためらうことを辱めたり、意思決定に介入したりすることで、自己疑念を強めてしまう。
安全性を高める方法:
・不確実性を当然のこととする。「いますぐ答えがなくてもかまいません。一緒に考えましょう」
・課題を小さなステップに分割する。凍結反応を示している人には、最初の一歩を踏み出す助けをする。「まずわかっていることを列挙してから、次の一歩を考えましょう」
・探索を通してコーチングする。答えを与えるのではなく、導く質問をする。「あなたが検討した選択肢を一つ教えてもらえますか」
4. 迎合/宥和(へつらい)
迎合反応は、部下がリーダーに常に同意したり、人を喜ばせるために仕事を抱え込みすぎたり、非難を避けるために反対意見を飲み込んだりする形で現れる。これは忠誠心や協調性のように見えるかもしれないが、実際には、本音を言うことが安全ではないと感じている可能性がある。マネジャーは、従順さを称賛したり(「彼女は本当に協力的だ」)、迎合的な従業員に過剰に仕事を任せたり、うなずきを同意と誤解したりすることで、この反応を強化してしまう。
安全性を高める方法:
・敬意を持って異論を奨励する。「懸念や異論があればぜひ聞かせてください。強力な意思決定に役立ちます」と言う。そして、発言した人には感謝する。「提起してくれてありがとうございます。重要な指摘で、見逃していたかもしれません」
・仕事を公平に配分する。すぐに志願する人を認識し、意図的に機会を広げる。「このタスクは誰もが機会を得られるように、いつも志願する人だけでなくローテーションにしましょう」
・率直さを評価する。従順さだけをほめるのではなく、従業員が厳しい現実を示した時に称賛する。「この計画のリスクを指摘してくれてありがとうございます。そのような正直さがチームを強くします」
5. 依存(愛着/助けの懇願)
職場におけるこの反応は、絶え間なく安心を求めたり、マネジャーに過度に依存して指示を求めたり、問題を誇張して注目を集めようとしたりする形で現れる。これらの行動は、支援は求めなければ得られないという不信感の表れであることが多い。マネジャーは、反射的に手を差し伸べたり(「私が対応しましょう」)、緊急性のある訴えにだけ対応したりして、この反応を強化してしまう。
ジェームズのチームの「過度に依存的」なエドガーは、このパターンを体現していた。ジェームズは当初、絶え間なく確認を求められることを負担に思い、わずらわしいと感じていた。しかし、その行動を「愛着/助けの懇願」反応と仮定し、アプローチを変えた。ジェームズは定期的な1on1ミーティングを設定し、期待値を事前に明確化し、誇張した行動に応じることなく、一貫して対応した。次第にエドガーの不安は低減し、ジェームズが安定して支援を提供してくれると信じられるようになったため、自分のニーズを誇張する必要がなくなった。
安全性を高める方法:
・予測可能な支援のパターンをつくる。従業員が注目を集めるために大げさに振る舞わなくても済むように、定期的なチェックインを行う。「手に負えなくなるまで待つ必要はありません。毎週木曜日に進捗と懸念事項を確認しましょう」
・緊急時だけでなく、一貫して対応する。定期的な進捗報告よりも誇張した要求に注意を向けないようにする。「指摘してくれてありがとう。他の課題と同じプロセスで取り組みましょう」と言う。
・自律性を促す。介入する前に「これまでにどのような手段を試しましたか」「どう対処するのがよいと最初に思いましたか」と尋ねる。
6. 放棄(崩壊/諦め)
崩壊の反応は、完全なシャットダウンだ。従業員がディスエンゲージメントに陥り、アイデアを出さなくなり、「どうせ無駄だ」という無関心な姿勢を取る。職場に存在はするが感情的には不在なプレゼンティーズムや、活力が失われたバーンアウト(燃え尽き症候群)として現れる場合もある。これは心理的安全性の欠如を示す最も明確なサインの一つであり、安全性を確保するためには完全に引きこもるしかないと感じている状態だ。
マネジャーがこうした人々を「ローパフォーマー」とレッテルを貼ったり、プレッシャーをかけて動機づけしようとしたりすると、諦念を深めてしまう。リーダーに必要なのは、助けを求めてもよいと思えるだけの安全な環境かどうか、注意深く見極めることだ。
あるクライアントは、パフォーマンスの高いエンジニアが突然会議で発言しなくなり、締め切りを守らず、明らかに気力を失っていることに気づいた。彼女は、相手を叱責するのではなく、個別に「以前より発言が少ないようですが、何か困っていることはありますか」と尋ねた。彼は、優先事項の高い仕事を複数抱えて燃え尽きそうになっていると打ち明けた。そこで彼女は、一緒にプロジェクトの優先順位を再調整し、一部を別の人に割り当て、彼には休暇を取得するよう促した。その対応によって、彼のエンゲージメントが回復しただけでなく、成果と同じくらいウェルビーイングを重視することをチームに示すことができた。
安全性を高める方法:
・思いやりを持ってアプローチする。静かに状況を確認する。「最近、会議であまり発言していませんが、何かありましたか」
・体系的なストレス要因に対処する。「いま、最も負担になっていることは何ですか。それはどのように調整できるでしょうか」と尋ねる。そして、業務を再配分する、優先順位を明確にする、障害物を取り除くなど、行動を起こす。
・休息と回復の余地をつくる。休むことを当然のこととする。「金曜日はリセットに充ててください。あなたのウェルビーイングはチームの成功に不可欠です」
* * *
脅威反応は、修正すべき欠陥ではなく、理解すべきメッセージだ。環境が安全でないと感じられる時に表面化し、逆に、罰せられることを恐れずに本来の自分を出せると信じられる時には薄れる。あなたがすべき仕事は、これらの行動を、個人がチームの風土においてどのような体験をしているかを示す重要な情報として読み取ることだ。好奇心、一貫性、思いやりを持って対応することで心理的安全性を高め、自己防衛的な行動の背後に隠れた、真の貢献を引き出すことができる。
*名前や個人の特定につながる情報は変更している。






