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なぜ戦略の立案と実行のバトンパスは失敗するのか
私は陸上競技の選手ではないが、リレー競技を見るのが大好きだ。
アスリートでなくても、リレー競技の最大の落とし穴がスピードではなく、バトンパスだということはわかる。バトンパスを成功させるためには、同じ方向に向けて全速力で走っている2人の走者が互いのことを全面的に信頼していなくてはならない。先を走る走者がバトンを手離し、後から走ってきた走者がそれをしっかりつかむ。その際、両者がバトンに責任を持つ瞬間がある。ここでほんの一瞬でも失敗すれば、バトンパスは失敗に終わる。
リレー競技だけではない。同じことは組織にも当てはまる。戦略と実行のバトンパスを成功させるためには、認識のすり合わせ、タイミングの調整、そしてチームが息を合わせて行動するための環境の整備が欠かせない。これらの条件が崩れれば、その組織は前に進めない。
戦略と実行の間に齟齬が生まれることは珍しくない。とりわけ、方向転換や事業規模の拡大、経営再建など、大きな転機に立たされている組織では、そうした問題が持ち上がりやすい。具体的な症状としては、退職率の上昇、売上げの低下、目標の未達、戦略の立案者と実行者の亀裂の拡大などを挙げることができる。
戦略立案者は、成果を要求する。一方、戦略実行者は、非現実的に思える要求に抵抗する。この両者の間に齟齬がある組織では、誰もが自分の言いたいことを述べているが、自分が理解されているとは誰も感じていない。
筆者はこれまで、戦略コミュニケーション担当の企業幹部およびビジネスアドバイザーとして、変革というテーマに取り組んできた。その経験から言うと、問題の原因がコミュニケーションそのものだけにあるケースはほとんどない。戦略立案者と戦略実行者は、同じ言葉を使っていても、その言葉に込めている意味が違う場合が少なくないのだ。
戦略立案者としては方向性を示しているつもりでも、戦略実行者は課題を言い渡されたと感じる。そして、戦略立案者が長期的な重要課題を指摘したつもりでも、戦略実行者はいますぐ実行すべき目標を課されたと受け取る。このようなやり取りが行われている場合、表面的には両者の足並みが揃っているかのような印象があっても、その言葉に込められたメッセージは食い違っている。
変革をうまく成し遂げる組織は、ビジョンと実行の結びつきを強化することに成功している。調整を促し、期待される結果を明確にし、チームが勢いを失わずに前進する助けになるようなシステムをつくり上げているのだ。
本稿では、戦略と実行のバトンパスが失敗しやすい3つの領域を取り上げ、戦略と実行の連携を円滑化させるためにリーダーができることを紹介する。
バトンパスはどこで失敗するのか
筆者が変革期の企業に助言してきた経験を振り返ると、問題が持ち上がることが多い領域が3つある。リレー競技になぞらえて言えば、走るペースの問題、走るレーンの問題、方針を決めるコーチの問題である。
ペースの問題:戦略が実行能力を超える
よく考え抜いて戦略を立案しても、その戦略の下で要求される仕事のペースと、戦略の実行を担う人たちの処理能力が噛み合っていなければ、失敗が待っている。
筆者が以前、CEOの職に初めて就任したばかりの人物に助言していた時のこと。その新CEOは極めて野心的な年間計画を打ち出した。ビジョンは非常に強力だったが、問題は、CEOが思い描いたペースでの前進を可能にするだけのスタッフや体制が整っていないことだった。







