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意思決定の基準が変わった時にリーダーは何をすべきか
中規模小売業者のCEOであるジョンは、ライバル企業が倒産の危機に直面する中、取締役会から明確な指示を受け取った。流動性の維持を最優先すること。さもないと経営陣を交代させる──。すぐさまジョンの頭の中のリスク認識が動き、市場シェア獲得モードから、生き残りモードへと切り替わった。ただ、ジョンの優先順位は一夜にして変わったものの、決定権に関する彼のチームの解釈はアップデートされていなかった。2日後にリーンな生き残り計画を取締役会に発表するという時になって、ジョンは自分のチームが、もはや無効となった古い優先順位に基づき数百万ドルの投資を約束していたことを知った。
ジョンのチームのシニアリーダーたちは、CEOのリスク許容度について古い認識に基づき動いていた。それは危険な断絶を生み出した。問題を察知した最高オペレーション責任者は、利幅を守るためにベンダー契約を独自に交渉し直していた。最高マーケティング責任者は、状況が悪化する中、需要を維持するため、プラットフォーム投資を約束していた。個別に見れば、いずれも合理的な措置だった。だが、総合して考えると、ジョンのリスク許容度と、取締役会の忍耐が尽きようとしているまさにその時に、会社の財務リスク(エクスポージャー)を拡大していた。
こうした事態は珍しいものではない。マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、不透明感が大きい時、組織は分析よりも連携に苦労することが多い。ボラティリティが大きくなり、優先順位の急な変更に対して、通達のスピードが追いつかない中、シニアリーダーはより早い段階で、より迅速に(そして多くの場合、トップが明快な認識を得る前に)手を打とうとする。このミスマッチを、筆者らは「シグナルギャップ」と呼びたい。これはつまり、リーダーによる優先順位の変更と、その変更がシステム内で解釈され、実行に移されるタイミングのずれだ。
複数の業界が激しいプレッシャーにさらされる中、筆者らは同じパターンが繰り返されるのを見てきた(フェルナンデスはエグゼクティブアドバイザーおよび学習・発達の専門家として、ランディスはエグゼクティブおよびチームコーチとして)。一見したところ、シニアリーダーの早合点や反抗に見えるものも、トップの無言のシフトに対する合理的な反応であることが多い。うまく対応できるリーダーは、いきなり締めつけを強化するのではなく、システムのリセットから始める。そこで、リーダーが取ることのできる3つのステップを紹介しよう。
1. 部下の行動を正す前に、自分がどのようなシグナルを送っているか理解する
シニアリーダーが一線を越えているように見える時、直観的にその行動を正そうと思いがちだ。だが、プレッシャーにさらされている時、リーダーは正式な権威よりも、自分が最も重要だと考えるシグナルに反応するものだ。リーダーの真の力は、あらゆることに判断を示すことではない。決定が下される環境に影響を与えることだ。
変動が激しい時、CEOはまず自分の姿勢を調整することが多い。期待を引き締め、リスク評価を厳格化し、予想外の事態への許容度を小さくする。こうした内面的な変更が表に示されないと、部下であるシニアリーダーたちは、わずかな手掛かりを頼りに変更を推測するしかない。何気ない発言でさえ命令と誤解され、CEOの意図とチームの実行との間にギャップが生じる。
ジョンの場合、このギャップを埋めるためには、自分の内面のシフトは明白だろうと思い込むのではなく、どのような決定(大きな資本コミットメント、長期契約、会社のエクスポージャーに大きな影響を与える措置など)を可視化すべきか明らかにする必要があった。リーダーたちは、メッセージをきちんと届けるための繰り返しと具体性の重要度を過小評価しがちだ。抽象的な指示では不十分だ。最高幹部レベルのリーダーでさえ、決定権が縮小された領域とそうでない領域を理解するためには、具体的な例を示してもらう必要がある。ジョンはこうした境界線を明確にすることで、自分だけの認識を、共通の理解に変えた。
マッキンゼーの研究は、このリーダーシップにおける下から上のダイナミクスを確認する。経営環境の不透明感が高まると、CEOの言葉や行動や決定の影響力は高まる。それらは、権威がどのように解釈され、システム全体でリスクがどのように扱われるかに関する最大の手掛かりとなる。
そうだとすれば、最初に見直すべきなのは、リーダーの内面の変化だ。他人の行動をどうこう言う前に、自分の中で何が変わったかを明らかにしよう。
次の自問をしてみよう。







