一方、マクレランド博士は、この成果を民間にも広く活用すべく、マクバー社(今の、ヘイグループ・マクレランドセンター)を立ち上げる。そして、「コンピテンシー」や人間の動機・価値観、マネージャーのリーダーシップスタイル、組織風土といった、普段見ることが難しいが、業績に大きな影響を与える要素の可視化や、それらを使った人材育成・人材マネジメント手法の開発に取り組んでいった。

「コンピテンシー」=
人材能力を可視化するモノサシ

 1990年代後半から2000年代にかけて、日本でも多くの企業が「コンピテンシー」を人事制度に導入した。それは、コンピテンシーブームとまで言われたほどだ。みなさんの中にも、自社の人事制度に、コンピテンシー要件や、リーダーシップ要件、あるいは行動要件など、呼び方は異なるかもしれないが、「コンピテンシー」が導入されているケースは多いだろう。しかし、コンピテンシーが上手く活用され成果を上げている企業もあるが、残念ながら形だけに終わっている企業の方が多いように見受けられる。何故そうなっているかは後で触れることにし、まずは、そもそも「コンピテンシー」が何なのか、説明したい。

「コンピテンシー」とは、ある仕事において、一貫して高い業績を上げる人に見られる行動特性のことである。逆にいうと、その仕事で高い業績を上げるために求められる特性である。コンピテンシー構築の第1ステップは、それらの特性を1つ1つの要素に分解していくことである。代表的な要素としては、例えば「リーダーシップ」や「育成力」、「達成指向性」などがある。

 コンピテンシー構築の第2ステップは、それらの要素ごとに、レベルの定義をしていくことである。例えば、「育成力」と呼ばれるコンピテンシーを例にとると、一般論として育成の重要性を認識しているレベルを1、実務的に役立つアドバイスや手本を見せるレベルを2、さらに背景にある理論が考え方、応用例などを教え、次からは独力でできるように育てようとしているレベルを3、といった具合である