経営資源・能力の違いに
対する自覚

 また包括的(BOP)ビジネスとは、あくまでビジネスとして遂行されるため、戦略理論が前提とする「個別企業の異質性」が強く意識される。企業戦略のゴールは、「競争に勝つことによって自社の企業価値を持続的に増大すること」にあるが、そのゴールへ向けての道筋は個々の企業が保有する経営資源・能力の違いにより、まさに様々である。

 そして上述したように、相当に深刻な社会問題解決に資する経営資源や能力を持っている企業の数は現実にはごく限られる。だが、もしも自社がその限られた企業の中に入るという自覚があるならば、その企業にとって包括的(BOP)ビジネスはリスクを取るに値するきわめて有望な事業となる。

 次回は、包括的(BOP)ビジネスが有する社会性と経済性がどのように両立可能なものなのか、どう折り合うものなのか、新自由主義の立場(フリードマン)とポーターとクレーマーによる「共有価値(shared value)」の原則(注3)を対比しながら考察し、第3の道を模索していく。

(注3)
Porter, M. E. and Kramer, M. R. (2006), Strategy & Society: The link between competitive advantage and corporate responsibility, Harvard Business Review, December 2006: 1-17.
Porter, M. E. and Kramer, M. R. (2011), Creating Shared Value, Harvard Business Review, January-February 2011:1-17.