伸びしろのある人は面接という時間の中でも成長する

――伸びしろという言葉があります。その人の将来性を見極めるのはさらに難しいと思うのですが、それはどのようにして判断しているのでしょうか。

 面接は、通常1時間程度です。伸びしろのある人は、最初の5分と最後の5分を比較しても成長しています。たとえば、最初の質問でうまく噛み合わないことがあったとします。その時点でうまく質問に答えられていないことに気づき、その理由を面接の間で考え、最後には面接官の問いに対して的確な答えを提示できる人は、伸びしろがあると判断できます。逆に言えば、1時間の面接の間で成長がゼロの人は、10時間でも2年間でも成長はゼロの可能性があります。

 また、採用プロセスのなかで成長する人も有望です。面接が進行するなか、1回目より2回目、2回目より3回目の面接に成長が見られる人は期待できます。人の意見を頭から否定せず素直に聞き入れる。新しいことを柔軟に受け入れる。自分にないものを取り入れようとする。そうした意欲のない人は成長できません。自分と違うものに対してどれぐらいオープンであるかという点も、見極めが必要です。

――面接での印象は良かったのに、実際に仕事をすると期待はずれだったというケースがあると思います。面接で見抜けなかったのでしょうか。

 最大の問題は、候補者と面接者の目標が一致していないことです。面接する側は、入ってから活躍できる人を採用したいと考えて面接に臨みます。このとき「自分が活躍できるかどうかよく見てください。活躍できるのであれば入りたい」というスタンスでやってくる候補者については、間違えることはほとんどありません。入ってから活躍できるかどうかをお互いに見極めるという成果目標が、双方で一致しているからです。そういう人は「自分はこういうことが苦手だけれど、それでもコンサルタントとして問題はないですか?」と自ら確認してきます。

 しかし、採用さえしてもらえれば活躍できると思っている人もいます。そういう人にとっては、入社がゴールです。その場合、候補者は面接で、普段の自分ではない姿を作って、プレゼンしています。面接者があの手この手で本当の姿を見極めなければなりませんが、簡単ではありません。期待はずれという事態は、そうして起こってしまうのです。

 ただ、成果を出せない人は去らなければならない組織なので、そうやって入社しても、損をするのはご本人です。結婚同様、「この人なら、結婚してから上手くいく」と双方が納得して結婚するのが基本であって、「とりあえず結婚さえしてもらえれば、あとはなんとかなる」と思うのは無謀です(笑)。

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伊賀泰代(いが・やすよ)
キャリア形成コンサルタント。兵庫県出身。一橋大学法学部を卒業後、日興證券引受本部(当時)を経て、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBAを取得。1993年から2010年末までマッキンゼー・アンド・カンパニー、ジャパンにて、コンサルタント(アソシエイト、エンゲージメント・マネージャー)、および、人材育成、採用マネージャーを務める。2011年より独立。現在は、キャリアインタビューサイト MY CHOICEを運営し、リーダーシップ教育やキャリア形成に関する啓蒙活動に従事する。

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