問題の捉え方とインサイトのレベル
レンタカー会社の事例が示すように、問題の捉え方によってインサイトのレベルが変わってきます。問題の捉え方とインサイトのレベルの関係を表したのが下の図です。
左は、ターゲットを観察することで得られるインサイト。レンタカー会社の事例でいえば「多くの顧客が子供の扱いに困っている」といったレベルのインサイトです。真ん中はデータから隠れたパターンを発見することによって得られるインサイト。「旅行者は、旅行に伴うストレスや緊張から開放され、元気を取り戻したい」というインサイトです。さらに、右がターゲットの観察からは得られないデータを活用することによって得られるインサイトです。

右では、極端なデータ、関係のないデータを分析に組み込むことによって、意図的に解釈の次元を引き上げます。そのひとつの方法が、データを極端なレベルまで拡張したり、逆にしたりするというものです。
例えば「多くの顧客が子供の扱いに困っている」という状況に対して、「もし子供が5人いたらどうなるだろうか」「子供の扱いを楽しんでいるとしたら何故だろうか」といった極端な問いを設定し、そのことによってデータの意味やつながりがどのように変化するのかを考察していきます。極端なデータを分析に組み込むことで、実際に収集したデータの限界を越えて、問題をより大きな枠組みで捉えることが可能になります。
もうひとつの方法が,メタファーを使うアプローチです。わたしたちには、見慣れないものに遭遇したとき、メタファーを使ってそれを見慣れたものにする能力が備わっています。この能力を、見慣れたものを見慣れないものにするプロセスに活用します。前回、メタファーを介したインタビューをご紹介しました。それと同じアプローチを、今度は自分自身が分析のプロセスで使うわけです。
レンタカー会社であれば、例えば、レンタカー会社をF1のチーム、ユーザーをレーサーに喩えてみるとどうなるでしょう。F1チームには「共通の目標を持っている」「事前に綿密な計画を立てたうえで、フレキシブルに対応する」「レースの間、レーサーとチームは常にやりとりしている」といった要素があります。F1チームの要素を使って、レンタカー会社と顧客が「共通の目標を持っている」というのはどういうことか? 「事前に綿密な計画を立てたうえで、フレキシブルに対応する」ことで顧客の旅行はどのように変わるか? といった問いを立てます。
慣れ親しんだ概念を異化し、これまで考えたこともなかった新しい側面を見つけるとき、メタファーは特に有効です。インサイトを使って問題の枠組みを変えるうえで、メタファーは、視点を意図的にずらし、問題の抽象度を上げていく強力なツールになります。

1.事実を凝縮するのではなく、新しい解釈をする
2.極端なデータを組み込んで解釈のレベルを上げる
3.メタファーを使って見慣れた物事を異化する

あなたの製品やサービスを他の何かに喩えて、あなたの製品やサービスに当てはめてください。これまで想像もしていなかったような製品やサービスの新しい側面が見つかったら、そこから顧客の隠れたニーズを類推してみてください。