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【前編】「バーガーキングが実践する、弱みを強みに変える逆転のマーケティング」はこちら。
大衆的なブランドであっても
自分たちの顧客を選ぶ自由がある
編集部(以下色文字):前回、バーガーキングのマーケティングを行ううえで、ポジショニングや強みとして、「直火焼き」をクリティカル・コアに定めたと伺いました。人もいない、お金もない、知名度もない状況下で存在感を高めるのは、非常に難しかったのではないかと思います。どのような工夫をされたのですか。
野村(以下略):前提として、どのアイデアも整合性が取れていて、ぶれないことを心掛けました。そのうえで、お客様にバーガーキングは面白いと興味を持っていただけるような施策をつくっていきました。
お笑い芸人に例えると、漫才の内容はコンビによって異なりますが、それぞれが面白いですよね。我々のマーケティングの手法もそれと同様です。お客様の中には、もしかしたらハンバーガーショップの間に大きな差を感じない人もいるかもしれませんが、あえて前回お伝えした「教室の隅にいるユニークな子」というキャラクターを確立させて、応援したいと思えるようなファンづくりをしてきました。
キャラクターや方向性を定めると、共感してくれない人たちとは、その時点でつながりがなくなるリスクがあり、ファン層を狭めることにもなりかねませんか。
ブランドが唯一やってよいのは、自分の顧客を自分で選べることだと考えています。ハイブランドは「こういうお客様に着ていただきたいから」と、あえてサイズや色を絞って展開することがありますよね。それは、どれほど大衆的なブランドであっても同じです。非常に安価で商品を提供すれば、誰でもファンになってくださるかもしれませんが、ブランドとしては300円で安売りするのではなく、500円の価値を感じていただきたいのならば、一貫性を持ったマーケティングが非常に重要です。
バーガーキングの「このようなブランドとしてやっていきたい」という考えにはまるお客様には応えて、そうではないお客様をあえて取り入れることはしないのも選択の一つということですね。
その通りです。この方針に従ってマーケティング組織を動かすと、施策の方向性もとてもわかりやすくなります。たとえば、ある担当者がバレンタインの商品でピンクを使いたいと言ったとします。これまでバーガーキングではピンクを使っていないですし、お客様が私たちにピンクをイメージしたこともないと思います。
あるいは、蝶ネクタイをつけたい、革靴を履かせたいという話が出たとしましょう。ですが、バーガーキングは、蝶ネクタイや革靴を履くタイプではありません。スニーカーを履くようなイメージですよね。ですから、その案は却下されます。
ブランドのキャラクターが決まれば、そうした方向性がすごくわかりやすくなりますから、ポスターをつくる時も、文字の大きさから曲がり方まで、一貫性を持って表現することができます。
賛否両論のマーケティングで学んだ「下げて上げる」ことの重要性
バーガーキングのマーケティング戦略は、非常に注目を浴びることがある一方、炎上につながったこともあり、賛否を呼ぶマーケティングと言われています。賛否を呼ぶこと自体、野村さんは意識されていたのですか。
意識はしていませんが、否があるのは当たり前で、だからこそブランドは生きていると考えています。みんなが素敵だと言うものは、一過性の可能性があります。自分のことを好きな人もいれば、そうではない人もいますよね。ブランドもまったく同じだと思いますから、気にしていません。ただ、コミュニケーションを通して、人を傷つけないようにはしています。それを守れるならば、個性は尊重されてよいのではないでしょうか。
世の中を賑せたマーケティングとして、東京のバーガーキング秋葉原昭和通り店での縦読み広告がありました。2軒隣にあったマクドナルドが閉店される時に出した、一見ねぎらうようなメッセージを縦読みすると「私たちの勝チ(ち)」になるというもので、非常に反響があった一方で、否定的な意見も強く、野村さんはこれを「失敗だった」と明確におっしゃっています。短期的なマーケティング効果を考えれば大きな成果だと思いますが、なぜこれを失敗と捉えているのですか。
私がマーケティングにおいて最も大切にしているのは、ブランドマネジメントです。その観点からは、大失敗でした。マーケティングの短期的な認知度アップやROI(投資利益率)の部分では最高の効果だったと思いますが、誹謗中傷やブランド毀損を生んでしまったからです。ただ、学びが多く得られたこの経験を皮切りに、私たちのコミュニケーションはどんどんよくなっていきました。
連日、ニュースなどで取り上げられて話題になった時、少し怖かったとのことですが、実際にどのような心境でしたか。
もともと私たちは、それほど注目されるはずがないブランドです。マクドナルドでもスターバックスでもないのに、そんなに注目されてはだめだろうという意味で、怖さを感じました。チャレンジャーのポジションを目指している段階でいっきに注目を浴びるとブランドにプラスにはなりませんし、嫌われる可能性さえあると考えていました。





