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社長から新任管理職へのおすすめ論文
「リーダーとマネジャーの大いなる相違」
私は人事担当として、毎年、管理職に登用された社員向けに研修を行っています。その企画を考える中で、社長の久米(康樹)に「新任管理職に薦めたい書籍」を尋ねたところ、紹介されたのが『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)の論文「リーダーとマネジャーの大いなる相違」でした。
DHBRの存在は知っていたものの、手にして読むことはありませんでした。ですが、デスクに戻ってすぐに検索してみると、他にも興味深いタイトルがあったので、その日のうちにDHBR電子版の会員になりました。
社員が管理職になり、ミッションが大きく変わる時には、これまでのやり方を踏襲するのではなく、新しい視点を取り込み、考え方を変えていかなければなりません。この論文は、新しいミッションに移行する際に、スキルやマインドセットの面で「7つの変化」を遂げる重要性を説いています。久米からの「2012年の論文ではあるけれど、何かある度に読み返している」といった言葉をヒントに研修プログラムに組み入れました。
私自身、この論文を読んでみて、グローバル企業を題材にしていることもあり、最初は当社とのつながりやマッチするところを見つけるのが難しく、すぐに内容が入ってこなかったというのが正直な感想です。ただ、研修事務局メンバーと7つの変化について「私達の会社でいえばどういうことなのか」を議論する中で、徐々に理解が進んでいきました。
管理職研修でのDHBR活用法
必ずアウトプットとセットにする
ある研修では、「リーダーとマネジャーの大いなる相違」を事前課題として配布し、研修当日に発表や意見交換をしてもらいます。
たとえば、この論文で取り上げられている、新しい役割へと移行する際の「7つの変化」のうち、自分が「最も共感した変化はどれか」「なぜ共感したのか」について、実体験を踏まえて意見を述べてもらいます。こうしたことを通じて、すでにできていること、これからやるべきことを自分の体験に落とし込み、共有していくようにしています。7つの変化の一つに「戦術家から戦略家へ」があります。管理職になる前は目の前の課題を一生懸命こなすことで成果を出してきた一方で、これからは「戦略家」として広い視野で物事を考えなければならないと気づいたという声もありました。
「リーダーの成長が止まる時」という論文も、別の管理職向けの研修を企画した際に活用しました。キャリアを重ね、管理職として一定期間が経過したからこそ、改めて「自分は停滞期に陥っていないか」を客観的に振り返ってもらうための題材として、とても魅力的だと思いました。
この論文には、自分の現在の立場を理解するための12項目の自己評価シートがついている点も魅力です。5段階で評価していくのですが、シートの注釈に「ほとんどの質問に3と回答してはいないだろうか」と書かれています。無難な状態に満足しないようにすべきという視点も自分を振り返る機会につながったと考えています。
また、せっかく研修を受けたのに「よい話だった」で終わってもらっては困りますから、自分と組織のこれからに活かしてもらうために、アウトプットを意識しています。アウトプットの質は人によって違いますが、発表や意見交換、あるいは研修後に上司と共有することで、人それぞれがレベルアップできると期待しています。
実は参加者には「『今回のプログラムはイマイチだった』と思ったら、あなたの負けです」と伝えることがあります。研修は、職場の人たちが送り出してくれた貴重な時間です。他責にして終わったらもったいないですよね。中身が難しかったり、易しかったりしたとしても、自分はそれをどう活かして、職場に還元するかをぜひ考えてほしいと思っています。
事業内容の進化・変革に欠かせない
自律的な人材育成
当社は保険会社ですが、お客様の「万が一」を限りなく減らし、健康的に長生きしていただきたいという思いで、2016年からは「健康応援企業」への変革をスタートさせました。2026年からはその範囲を広げ、お客様の人生に伴走し、健康や介護、老後資金に関する不安にも寄り添う「ウェルビーイング応援企業」への進化を始めています。
ただ、「ウェルビーイング応援企業」への進化は、本社や誰かからの指示だけで成し遂げられるほど簡単なものではありません。社員一人ひとりが「お客様のために何ができるか」を考え、能動的に動くことが必要になります。人事としても、自律型人材が次々と生まれ、活躍できる環境・体制を充実させていきたいと考えています。
そこで、すべての社員が自律的なキャリア形成を実現できるよう、2025年4月より「全社員参画型人事制度」をスタートさせました。この制度では、目指すキャリアに向けて、社員が自らの意思で5つのコースの中から選択することができます。具体的には、自身のパーパスや経験・スキルを社内に開示し、共感した部署からオファーを受ける「スカウトコース」をはじめ、「他部署チャレンジコース」「マネジメントチャレンジコース」「自部署チャレンジコース」「キャリアアサインコース(人事による配属)」といった選択肢を用意しています。
新入社員については、まず会社全体の事業を理解してもらう観点から、本人の希望を聞きつつ、最適な初期配属を人事が担っています。まだ自分がどう活躍していきたいかを描ききれていない部分があっても、その後の1年間の実務と上司との対話を通じて、自らのキャリアビジョンを明確にし、翌年からは「全社員参画型人事制度」へと移行できるような制度設計にしています。

当社が「ウェルビーイング応援企業」へと進化するに当たって勉強をする中で、先日、AIを活用した新規事業に関する講演を聞き、資源配分の「70:20:10の法則」が強く印象に残っていました。その後、社長の久米と雑談をしていた際にこの話をしたところ、久米が机の上に置いてあった『ハーバード・ビジネス・レビュー CEO論文ベスト12 経営者の教科書』を指さして、「ここに書いてあるよ」と教えてくれたのです。それがまさに、論文「イノベーション戦略の70:20:10の法則」でした。講演で聞いたキーワードが目の前でパチッとつながり、一気に興味が湧いて読み進めました。
この論文では、新領域に対して既存事業と同じ評価軸を当てはめると、優れたアイデアが潰れてしまう危険性が指摘されており、同時に、私たち自身が「10%の新しい領域にチャレンジできているだろうか」と、あらためて自分に問うきっかけにもなりました。
私自身、新しい挑戦に、つい無意識のうちに既存事業の物差しや成功体験を当てはめてしまいがちです。領域ごとに必要なKPI(重要業績評価指標)などのチェックポイントを適切に変えていくことの重要性をこの論文により再認識しました。
「女性管理職」という立場から共感した記事
DHBRは、雑誌の定期購読もしています。届いてすぐ、すべてに目を通すというより、気になるものを読んだ後はストックしています。日々、ある課題に直面すると、本を読む代わりに、DHBRの過去の特集にあったなと思いながら、該当する論文を見つけて読んでいます。
DHBRがいいなと思うのは、最新号だけでなく、以前の号も参考になることです。「リーダーとマネジャーの大いなる相違」も2012年の論文ですし、多くの論文や記事が自分の考えをまとめるためのヒントになる内容ですから、新しいか古いかはあまり関係がない点も魅力です。
最近、興味を持った記事が「組織の頂点で女性がエネルギーを保つ方法」です。私も女性の管理職として、日々プレッシャーを受けつつも、皆に助けてもらいながら仕事をしているのですが、この記事の中で、女性が特有の状況下で成功するために活用している3つの戦術の一つとして、「本音で対話ができる信頼関係や心理的安全性の重要性」が説かれており、とても共感しました。
私が管理職になったばかりの頃、「女性管理職」と言われて「女性ならではのことを言わなければならない」「女性らしい視点を求められている」と自分で勝手に解釈してしまっていました。ある時、「『女性管理職』と言われても、女性らしさとかわからないですし、悩んでいるのです」と信頼する上司に率直に胸のうちを話したところ、「別に気にせず、野田さんらしく、自分の意見を言えばいいんじゃないかな」と言われました。何でもない会話でしたが、気持ちがとても楽になり、それからは「これは私の意見です」と伝えられるようになりました。
ご紹介した記事でも書かれているように、私自身、本音をさらけ出して話せる仲間が数多くいますし、助け合いができるよい企業風土に恵まれていると思います。








