コマツの戦略にしても、製品と部品をグローバルに標準化したり、中国などで地域の小規模ディーラーを、時間をかけて組織化したり……と説明すれば切りがありませんが、さまざまな要素の絡み合いを見ると、競合のキャタピラーとまるで違っていることがわかります。木の全体をじっくり読み解いて初めて、持続的な利益が出ている理由がわかるのです。このあたり、詳しくはポーター賞のサイト(http://www.porterprize.org/)をご覧いただければと思います。

 戦略に目を向けることは、ビジネスパーソンの自意識の持ち方においても重要です。何かに失敗したときに「景気が悪いから」「業界が成熟しているから」という思考パターンで済ませてしまえば、話がそこで終わってしまいます。

 失敗したときにこそ、外部環境や業界構造のせいにするのではなく、戦略と関連づけてその原因を特定することが大切です。そうしないと、次につながるきちんとした対策を打ち出すことができないし、環境の変化にも対応できなくなります。

 戦略を理解し、読み取る能力は、経営リーダーにとって欠かせません。数多くの優れた戦略や失敗した戦略を解読する。こうした地道な作業を重ねることが、実は戦略構想力を身につける王道にして近道だということは、以前もこの連載でお話ししたとおりです。

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