編集部が厳選、今週の必読記事9選:2026年9月19日〜9月25日公開
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サマリー:AIの普及は競争環境や人材に必要な能力を変えた。それに伴い、リーダーの役割も問い直す必要がある。変革には経営層の行動変容と現場の声の活用が欠かせない。今回は、AI時代のリーダーシップや組織・人材、法的リスク、ブランドへの影響から企業の競争力を考える。

変革を実現するリーダーに欠かせない能力とは

 AIの普及は、企業の競争環境や人材に求められる能力を変えるとともに、リーダーの役割にも変化を迫っている。変革を推進するには、経営層がみずから行動を変え、現場の声を意思決定に活かすことが欠かせない。同時に、AI導入に伴う法的リスクやブランドへの影響にも目を向ける必要がある。今回は、変革を実現するリーダーシップ、AI時代の組織と人材、企業の競争力を考える記事を紹介する。

1. リーダーは、従業員に期待する変革をみずから体現せよ

著者:アントニオ・ニエト=ロドリゲス

 企業変革が頓挫する原因は、従業員の抵抗ではなく、リーダー自身が行動を変えないことにある。経営陣が挑戦や実験を奨励しながら、従来の承認プロセスや評価制度を維持していては、組織の変化は進まない。DBS銀行では、経営トップが顧客の声を直接聞き、実験に参加することで、組織全体の変革を促した。リーダーはスローガンを掲げるだけでなく、時間や資源の配分、日々の意思決定を通じて、従業員に期待する変化をみずから体現する必要がある。

2. 現場の声を変革の力に変える6つのステップ

著者:コンスタンス・ヌーナン・ハドリー , デボラ・ロビッチ

 顧客と接する現場の従業員は、業務上の問題や改善の機会をいち早く把握できる存在だ。しかし、多くの企業では経営層と現場の間に見えない壁があり、その知見を十分に活用できていない。従業員調査を実施するだけでは問題は解決せず、現場の声を具体的な改善につなげる仕組みが欠かせない。ある大手製薬会社の事例をもとに、従業員と課題を共有し、AIツールの運用や業務設計、裁量権を見直すことで、エンゲージメントと事業成果を高める6つのステップを紹介する。

3. AIが引き起こした問題の責任は、ベンダーではなく導入企業に降りかかる

著者:M. アレハンドラ・パラ=オルランドーニ , パウロ・カルバオ

 外部ベンダーが提供するAIを導入した企業は、システムをみずから開発していなくても、差別やデータ侵害などの問題が生じれば法的責任を問われる可能性がある。AIの仕組みや学習データを十分に把握できないことに加え、独自のカスタマイズ、ベンダーへの依存、国や地域による規制の違いもリスクとなる。企業はAIの導入を外部任せにせず、技術的な透明性の確保や責任分担の明確化、継続的な監督を通じて、予期せぬ法的リスクに備える必要がある。

4. AIによって知らぬ間に蓄積する「ブランド負債」をどう管理すべきか

著者:ショーン・ライオンズ , エヌディディ・オテ , ジョシュア・ベリン

 企業の製品や顧客体験が、顧客の期待から乖離することで蓄積する「ブランド負債」は、AIの普及によって拡大しやすくなっている。AIによる顧客対応の自動化やパーソナライゼーションは効率を高める一方、小さな不備や一貫性の欠如を大規模に広げ、顧客の信頼やロイヤルティを損なうおそれがある。60社を対象とした調査では、ブランド負債の少ない企業ほど中長期的に高い業績を収める傾向が見られた。企業が負債を把握し、戦略的に管理するための5つのアプローチを示す。

5. AIの普及で変化する、採用される人材の条件

著者:ジム・ドゥーセット , ビシャル・ガウル

 生成AIの普及により、企業が新たに採用する人材に求める能力が変わりつつある。AIが従来の専門的な業務の一部を担うことで、個人が遂行できる仕事の範囲は広がり、特定分野の専門知識だけでは十分な成果を上げにくくなっている。筆者らは、金融、コンサルティング、テクノロジー分野の30社を調査し、採用担当者や経営者の期待がどのように変化しているかを分析した。AI時代に人材が活躍するために必要な3つの能力を明らかにし、採用や人材育成のあり方を問い直す。

6. 日米企業の比較で明らかになったAI導入の教訓

著者:ナタラジャン・バラスブラマニアン , 淺羽 茂 , ラム・バラ , アミット・ジョシ

 AI導入で先行する米国企業も、必ずしも投資に見合う価値を生み出せているわけではない。一方、日本企業は導入速度で後れを取るものの、現場に根差した活用によって生産性を高めている事例がある。米国には導入の速さに組織変革の深さが伴わず、日本には現場での深い活用を組織全体に広げる速さが不足するという課題がある。両国の企業が直面する構造的な問題を6つの層から分析し、AI投資を持続的な価値創出につなげるための教訓を提示する。

7. リーダーが従業員の意欲を最大限に引き出す方法

著者:アリソン・マイスター , ネーレ・デール , デイビッド・バッハ

 不確実性の高い時代に従業員の意欲を引き出すには、魅力的なビジョンを掲げるだけでは不十分だ。重要なのは、従業員がその未来を実現可能だと感じ、目標に向けて行動する希望を持てることである。希望は単なる楽観主義とは異なり、目標を達成しようとする意志と、そのための方法を見出す力を伴う。一方、現実を無視した希望は組織の信頼を損ないかねない。希望の4つの形態を整理し、望ましい未来への期待と現実的な実現可能性を両立させる方法を解説する。

8. デジタル経済の分断化によってグローバル競争はどう変わるのか

著者:バスカー・チャクラバルティ , アビデミ・アディサ , クリスティーナ・フィリポビッチ , シュエ・ニウ

 米中の技術覇権争いや各国の規制の違い、AI開発競争によって、世界のデジタル経済は分断が進みつつある。これまで企業は国境を越えたデジタル市場の拡大を成長機会としてきたが、今後は市場ごとに異なる規制や地政学的リスクへの対応が欠かせない。筆者らは世界125カ国のデジタル経済を分析し、市場の成長性だけでなく、各国の規制や技術環境、デジタルアクセスの格差などを踏まえた戦略の必要性を指摘する。分断が進む世界で、新たな成長機会を見出すための視点を提示する。

9. AIによる業務加速に追い立てられるマネジャーに必要なこと

著者:リズ・フォスリエン , モリー・ウェスト・ダフィー

 AIによって従業員の業務遂行が加速する一方、次々と生み出される成果物の確認や意思決定を担うマネジャーが、新たなボトルネックになっている。従来のように部下の仕事を逐一確認する管理手法では、上司の負担が増え、チーム全体の生産性も損なわれかねない。これからのマネジャーには、個々の作業を点検する役割から、チームの進むべき方向を示す役割への転換が求められる。AI時代の業務スピードに適応し、組織の成果を高めるための5つのアプローチを紹介する。

可能性とリスクを見極める力を高め続けよ

 今回の記事群を通じて浮かび上がるのは、AIやデジタル技術が進化する中で、企業が変革を実現するためには、技術の導入だけでなく、リーダーシップや組織のあり方そのものを見直す必要があるということだ。リーダーがみずから変化を体現し、現場の声を活かしながら、従業員の意欲と能力を引き出すことが求められる。同時に、AIがもたらす業務の加速や人材要件の変化に対応し、法的責任やブランドへの影響にも目を配らなければならない。企業が持続的な競争力を築くためには、技術の可能性とリスクを見極め、組織全体の変革につなげていくことが重要である。