社長と副社長のリーダーシップスタイルの違い
岩瀬 HBSで人を導くための3つの要素を学びました。「lead by greed」「lead by fear」「lead by example」。つまり、お金で引っ張るか、恐怖で引っ張るか、背中を見せて引っ張るかということですね。もちろんこれも真実だとは思いますが、出口は少し違った表現をしていました。彼はこう言います。
「人が誰かについていきたいと思ってもらうのは3つの要素しかない。誰よりも仕事をして、私も頑張らなければいけないと思わせること。あの人が好きだからついていきたいと思わせること。または、皆にはないぶっちぎりの能力を見せてかなわないと思わせること」。この3つの要素、自分にはどういう意味があるのか、考えるようにしています。
僕は副社長というポジションにいますが、外資系プロフェッショナルファームでしか働いたことがなかったので、いわゆる「副社長」という人を見たことがなかったんですね。そもそも副社長になったのも、僕と出口しかいなかったからというのが理由です(笑)。副社長とはどういう存在か。それも出口に聞いたことがあるんです。
「今年のことはみんなが考えてくれるから、来年以降のことを考える。社内をくまなく歩き回ってみんなの顔色を見て、働きやすい環境を作る。トップセールスで1件でも多く売る。経営者の仕事として、この3つさえやっていればいい」

(いが やすよ)
キャリア形成コンサルタント。兵庫県出身。一橋大学法学部を卒業後、日興證券引受本部(当時)を経て、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBAを取得。1993年から2010年末までマッキンゼー・アンド・カンパニー、ジャパンにて、コンサルタント(アソシエイト、エンゲージメント・マネージャー)、および、人材育成、採用マネージャーを務める。2011年より独立。 現在は、キャリアインタビューサイト MY CHOICEを運営し、リーダーシップ教育やキャリア形成に関する啓蒙活動に従事する。
こうしたことを出口から教わりながら、少しずつ学んでいるところです。
伊賀 ライフネット生命さんがユニークなのは、出口さんと岩瀬さんの年代や性格の差異はもちろんのこと、おふたりのリーダーシップスタイルの違いが絶妙なコンビネーションを生み出しているからかなとも思うんですが、いかがですか。
岩瀬 そうですね。出口はブレない太い柱を持つ人、つまり「動かない大きな岩」というイメージです。信頼も厚く、あの人についていこうと思わせる人ですね。僕は、社員を元気よく盛り上げるタイプだと思っています。
伊賀 私、リーダーに関しては、それぞれの人が自分のなりたいリーダー像、もしくは得意なリーダーシップスタイルを持っていて、それが人と違うというのが重要だと思っているんです。
多くの人は、リーダー像として、カリスマ性があって、ものすごいオーラを放っているようなひとつのスタイルだけをイメージしていて、その像のようにならなければリーダーではないと誤解しています。だからすぐに「私にはリーダーなんて無理」と諦めてしまう。
そうじゃなくて、リーダー像は複数あり、どれかひとつのスタイルじゃなくてもいいんだということが理解されれば、もっと多くの人がリーダーシップを発揮しようという気にもなると思います。
岩瀬 それぞれの強みを生かして引っ張るということですね。全員が4番でサードじゃなくていい。2番セカンド、8番レフトでもいいから、それぞれのポジションでリーダーであればいいと僕も思います。