リーダーはすべてを完璧にこなす必要はない

伊賀 今は副社長ですが、最終的には岩瀬さんも、社長というポジションで企業を率いていきたいと考えていらっしゃるんですよね?

岩瀬 はい。ただ、振り返ってみると僕はこれまでリーダーを務めたことがなかった。子どものころから目立つ存在ではあったんですけど、キャプテンも委員長もやったことがありません。僕は「人間は大人になってもキャラクターは変わらない」と考えています。だとすると、僕にリーダーが務まるんだろうか、そう考えていた時期もあります。

 でも、今は考えを改めて、自分らしいやり方でやればいいと思っています。それは、周囲の人の力を上手に借りながらチームでマネージしていくということです。伊賀さんは、今の話をお聞きになってどう思われます? キャリアカウンセラーとしては(笑)。

伊賀 本にも書きましたが、私はリーダーシップに関して言えば才能の部分は非常に小さいと思っています。リーダーシップは、勉強やゴルフ、もしくは料理などとまったく同じで、訓練で身につくスキルです。まずは基礎をきちっと勉強し、実際にやってみて、フィードバックを受けて、どんどん経験を積んでいくことで一定のところまでは身につけられると思います。

岩瀬 あ、今思い出しました! そういえばHBSで学級委員長をやりました。100人ぐらいの小さなクラスでしたけど。確かに、それがターニングポイントだったかもしれませんね。僕は留学をきっかけに変わったので、そこでリーダーになりたい、なれるかもしれないと考え始めたのだと思います。

伊賀 その時、どんなリーダーになりたいと考えたんですか。

岩瀬 やっぱり、今の延長線上でしかないと思うので、自分の強みを最大限確保して、足りないところを強化していくことでしょうね。僕は平均点が高い優等生ではなく凸凹があるタイプなので、突出しているところを生かしながら、拙速になることなく慎重さを身につけたいと思っています。

伊賀 『採用基準』に書いたスパイク型人材ですよね。リーダーだってすべてを完璧にこなせる必要はないんです。日本人は万能の神のようなリーダーを求めていて、どこか一部でも完璧でないところがあると、そこを突いて引きずりおろしてしまう。すべてに完璧な人はどこにもいないのに、一切のミスを許さずに文句ばかり言って叩いて、せっかくのリーダーを潰してしまうのはとてももったいないです。