リーダーシップと人望はリンクしない
岩瀬 伊賀さんが尊敬されるリーダーは、どういう人ですか。
伊賀 リーダーシップは全員が持つべきだと思うし、人によってそのスタイルも全く違ってよいと思いますが、カリスマ的なリーダーとして尊敬しているのは、ソフトバンクの孫正義さんやヤマト運輸の小倉昌男さんでしょうか。
既成の制度や大きな力とものすごく粘り強く戦って、実際に世の中を変えてしまう。これだけのことが個人で成し遂げられるんだということにびっくりします。第一人者として道を切り拓くのって本当に大変だし、強い志がないとできないことです。
岩瀬 変革を実現してきた人だからですか。
伊賀 そうですね。今の社会に文句を言うだけじゃなくて、オレはこういう世の中を実現するぞっていう、変革後の姿というか成果目標を自分で具体的に決めて、実際にそこに向かっていけるってすごいことだと思うんです。。ルールが与えられているゲームを上手にこなす人はたくさんいるけれど、こういうルールでゲームをしましょう、そのほうがおもしろいでしょ、世の中よくなるでしょ、と言って多くの人にそれを認めさせるのはたいへんなことだと思います。
岩瀬 本を読んでいても、今日お話しをお聞きしていても、伊賀さんの口から「人柄」「人望」という言葉がまったく出てこないのが印象的です。
伊賀 私にとってリーダーって、必ずしも人柄のいい人、人望のある人ではないからでしょうね。むしろ反対のイメージさえあります(笑)。本にも書いたように、和を維持することより成果を出すことにこだわるのがリーダーなので、そのためには切り捨てなければならないことがたくさんある。だからリーダーシップに人柄が必要だと言い出したら、それはもう違うものになってしまうと思います。
その人と一緒に働くと大変だし、つらいこともあるし、やってられないよと思うことも多い。それでも人がついてくる。私にとってのリーダーってそういう人です。人は、いい人だから、優しい人だから、人格が優れているからという理由で誰かについていくわけではないと思ってるんです。大きな成果を出そうとしたら、周りとの摩擦なしには何もできませんから。
岩瀬 孫さんは素晴らしい人というよりもチャーミングという印象が強いですね。小倉さんにしても、どこかで愛されていたんでしょうね。
伊賀 どちらもチャーミングですよね。高い志に燃えて一生懸命なわけですから、結果的には多くの人がチャームを感じるんでしょう。でも最初からリーダーがチャームを目指してはいけないと思うんです。
岩瀬 そうですね。そのチャームは何から来ているかというと、たぶんパッションだと思うんです。やりたいことが強烈にあるから、いわゆる「空気を読まない(KY)」でも仕方がないと思わせるものがあるんでしょうね。
伊賀 その通りですね。しかも彼らが目指す成果は私利私欲のためではなく、むしろ自分自身は最も厳しい道を歩いている。成果に対するこだわりがあまりにも強すぎるからKYにもなるし、人に厳しくもなる。その厳しさに耐えられない人もいるでしょうが、実際には多くの人がそういう人を魅力的だと感じるということですよね。
※前編はこちら。
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