ネットワーク密度の高さ
人的つながりが部署内に留まらず、部署外あるいは社外にまで拡大している方が、様々な知見の化学反応が発生しやすく、それがイノベーションにつながっていることを前回は説明した。近年ではP&G社の様に、社外へのネットワークを会社全体の取り組みとして推進している企業も増加傾向にある。
では社内外におけるネットワーク密度を高めるために、人事部はどの様な取り組みが必要になるのだろうか?一つには部門間をまたいだ戦略的なローテーションが挙げられる。ネットワーク密度の高さがイノベーションに寄与するのは、異なる種類の情報流通が促進されるからだ。そこで重要になるのが部門をまたいだ異動なのである。
近年はカンパニー制の導入が進み、新卒で入った人材の多くが一度も他のカンパニーの経験をしないまま、管理職層になっている会社も多いが、こういったサイロ型の育成方針ではネットワーク密度を高めることは難しいだろう。
もう一つが「出戻り制度」の導入である。一般に、日本企業の多くは退職者に冷たいが、これはネットワーク密度を高めるという点からは、実にもったいない話である。一度退職した人材が、何らかの理由で再度復帰した場合、この人材は社内のネットワークと社外のネットワークの結節点になってくれるはずだ。
最後に挙げたい手法が、部門間をまたいだ人材によるアドホックプロジェクトの活用である。日産はゴーン社長の元で異なる部門間の人材によって構成されたクロスファンクショナルチームを活用して再生に道筋をつけたが、この様な活動の後では部門間を結びつけるネットワークの結節点は、大幅に増加しているはずである。