インパクト・インベスティング
包括的ビジネスを巡る資本市場の変化を象徴するのが、「インパクト・インベスティング」という投資スタイルの台頭である。2008年にロックフェラー財団が中心となって創設されたGlobal Impact Investing Network (GIIN)は、社会的・環境的インパクトを持った投資案件と投資家をマッチングするプラットフォームであるが、この組織を立ち上げる投資家ミーティングが2007年にロックフェラー財団主催で開かれ、そこで「インパクト・インベスティング」という概念・呼称が生まれた。
GIINは「社会的・環境的問題を市場原理に基づく方法によって解決しようとする資本の規模と効果を劇的に向上させるために機能する。我々のゴールは、一貫性のあるインパクト・インベスティング業界のしくみを形成・強化し、投資資本が効率的に社会・環境問題の解決に結び付いていくことを促進することにある(GIINホームページを参照)
このインパクト・インベスティングは2009年、戦略論の始祖でもあるマイケル・ポーターが創設したシンクタンクのモニター・インスティテュートが、2009年に出したレポートでも詳細な定義と解釈が紹介された(Monitor Institute 2009)。“Impact Investingが新たな業界として生まれつつある”というテーマの下に書かれたこの報告書では、ESG投資への関心の高まりにも呼応して、「社会的・環境的価値を生み出すために利潤追求型の投資を活用しようとする動きは、かつての活動家を中心としたマイナーな投資家の手から、投資業界の主流・中枢の手に移ってきている」(Monitor Institute 2009:p.1)と述べている。
この報告書において、インパクト・インベスティングとは、「社会的もしくは環境的善をもたらす事業やファンドに対して積極的に投資を行い、投資家に対しては少なくとも元本相当を返す投資」と定義されている。この定義の背景にある信念とは、「ある一定レベルの財務的リターンと社会・環境的インパクトは両立可能である」というものだ。