多国籍企業の誤解

 2万社を超える多国籍企業が現在、新興国市場でビジネスを行っている。『エコノミスト』誌によると、欧米の多国籍企業は、今後の成長の7割が新興国市場にあると期待しているという。そして中国とインドが、そのうちの4割を占めている。

 しかし、チャンスが巨大なら、それをつかむことを妨げる障害も大きい。世界銀行が発表した『ビジネス環境の現状2010』によると、世界183カ国中、中国は89位、ブラジルは129位、インドは133位にランクされている。『エコノミスト』誌は、世銀の結論を要約して、次のように書いた。「これらの市場で企業が繁栄する唯一の方法は、徹底的にコストを削り、ほとんどゼロも同然の利益率に甘んじることだ」

 もちろん、課題は非常に大きい。しかし、この意見にはとうてい賛成できない。バンガロールの街角にも、中央インドの小都市にも、ケニアの村にも未来のビジネスチャンスがあることを、我々は目にしてきた。そして、それらを開拓するうえで、企業が利益を犠牲にする必要などない。後述するが、それらは一見、クリーニング・サービス、自家用小型冷蔵庫、送金サービスなど、きわめてありきたりに見える。