概念的な教訓と実証的な方法論を取り混ぜ、リーダーに直接語りかけるゴビンダラジャン。そのメッセージは独特の説得力を持つ。今回は、長期的成長を目指すリーダーが最初にやるべきことを示す。


 我こそは真のリーダーだ、という人に伝えたい――いまこそ、長期的思考が求められている。不況期こそ、事業拡大の準備をする最良の時である。不況の後には、必ず成長期が来るものだ。では、何をどのように始めたらよいのだろうか。以下に5つのステップを提案したい。

ステップ1 目標を明確にする
 企業の大小を問わず経営幹部は、「現行業務のマネジメント」と「新たな成長のための取り組み」との対立に直面する。この対立は、注意関心、時間、経営資源をめぐる絶え間ない争いを意味する。しかし、もはやそうした贅沢な選択は許されない――以前はどうであったにせよ。

 HBR誌2004年4月号に、チャールズ・A・オライリー3世とマイケル・L・タッシュマンの共著論文"The Ambidextrous Organization"(邦訳は本誌2004年12月号「『双面型』組織の構築  既存事業と新規事業の並立を目指す」)が掲載された。筆者らにとっては、タイトルだけでも永久保存版のトップ5に入る。

 生まれつき両手利きの人は、どのくらいいるだろう。きわめて少数、おそらくは人口の3~5%程度ではないだろうか。ここでいう両手利きというのは肉体的な特性、すなわち、どちらの手でも書いたり打ったり投げたりできるという意味だ。

 日常生活と同様に、ビジネスでも人はたいてい右利きか左利き、つまり「右脳思考型」か「左脳思考型」に分かれ、得意なほうに頼る。しかし、ビジネスにおいて成功するためには、両利きであることが求められる。だから、我々は新たなスキルを身につけなければならない。利き手ではないほうで書いたり、投げたりする練習をするのと同じだ。

 人は行動に応じた成果しか得られない。何かを実現するためには、ただ望んだり欲したりするのではなく、時間、エネルギー、意識を注ぐ必要がある。長期的成長を望んでいるのであれば、単にそれを望むだけではなく、実際に何かを始めなければならない。成長にはリーダーシップが求められる。自分で何もかもやる必要はないが、ただ人任せにしてもいけない。

ステップ2 皆が同じ言葉を話すようにする
 昨日と同じことをやり、異なる結果を期待していても、長期的成長は実現できない。我々の世界では、成長とは転換的イノベーション、あるいはブレークスルーをもたらすイノベーションを促進することと同義である。そして意外かもしれないが、イノベーションを追求するリーダーが初期に実践すべき有効な取り組みとして、自分の言葉を明確に定義する、というものがある。そんなことはどうでもいいと思うのであれば、優秀な同僚5人に「ブレークスルー・イノベーション」をどう定義するか尋ねてみてほしい。それらの定義を書き出して、自分の定義と一致するか確かめてみよう。

 筆者らの定義は次のとおりだ。ブレークスルー・イノベーションとは、新たな価値提案を伴い、新たな市場へと事業を拡張し、新たな優位性を確立するイノベーションである。この定義があなたに役立つかどうかは、問題ではない。重要なのは、あなたが用いる定義がどのようなものであれ、それが明確かつ有益で、チームや組織全体で共有されている必要があるということだ。