もしも自社の意思決定が、過去の成功体験から生まれた「支配的論理」にしばられているとしたら、新興国市場での成功は期待できないとゴビンダラジャンは言う。それを診断するためのチェックリストと変革の方法を紹介する。


 欧米の多国籍企業、特に最も大きな成功を収めている企業は、新興国市場での成長目標の達成にいつも苦戦している。なぜなら、過去の成功体験で用いた手法、つまり、先進国市場で非常にうまく機能した手法を再び使おうとしているからである。

 高級車用のハイエンド車載インフォテインメント・システムで大きな成功を遂げた、ハーマンがそうだった。だが、同社が途上国市場に浸透していく最初の努力は実を結ばなかった。ハーマンはハイエンドシステムの簡易版をつくったのだが、貧しい国で惨敗に終わった。

 ハーマンや同様の多くの他社にとって、制度化された思考 、すなわちC・K・プラハラッドが最初に「支配的論理 (dominant logic)」と呼んだものが、新興国市場で機会を最大限に捉えるための努力を台無しにしかねない罠をつくり出す。新興国市場の顧客が、豊かな国の顧客とは異なる種々雑多なニーズを持っているために、そうなるのである。HBRへの寄稿“A Reverse Innovation Playbook”(邦訳「リバース・イノベーション 実現への道」本誌2012年8月号)および拙著Reverse Innovation(邦訳『リバース・イノベーション』ダイヤモンド社)で、共著者クリス・トリンブルと私は、いかにして欧米の多国籍企業が支配的論理を打ち破れるかを詳細に説明している。しかし、出発点は、あなたの会社に今ある支配的論理について理解することである。それをざっとつかむために、次の問題に答えてみてほしい。