ではそのために会社はどういう場であるべきか。もちろん、個々人が日々成長を感じられる、やりたい職務ができるといった仕事そのものが魅力的であることが重要なのは言うまでもないし、ストックオプションなど金銭的なアップサイドへの期待が保たれることも大切だと思う。職場の雰囲気だって良い方がいい。
しかしそれらに加えて、わくわくするような「大冒険感」を皆で感じられるかが、実は楽しさに直結するのではないかと僕は秘かに考えている。そして、それを皆が上手にイメージできるようにするのが僕の役割ではないかと思う。そのために、自分がまず大冒険を心から楽しみ、うまくいった時の凄さや、今していることの意味をしっかり考え抜いて、自分の言葉でチームに伝えていくことが必要だと思う。
事業が大きく立ち上がる正確な日時は分からないにしても、方向自体が大きく間違えていない限り、日々前に向かって進めば、結果は後からついてくるものだ。身をよじりながらでも、諦めずにやり続ければ何とかなるのも、またネットビジネスである。
南場さんの『不格好経営』をロンドンに空輸し、相棒の中野さんに読んでもらった。一言目の感想は「Quipper、やっぱりDeNAのDNAを継いでいますねえ」だった。
それを聞いて僕は素直に嬉しく感じたのだが、その理由を考えるに、僕にとってDeNAはやっぱり楽しい場所だったからだろう。事業内容も環境も異なるが、Quipperも、参加するメンバー全員が本当に楽しいと感じられる場所にしたい。
目標は小粋なサービスではなく、巨大な知の流通プラットフォーム。少し当初の予定より時間はかかりそうだが(予定はだいたい外れるものだ)、この旗は降ろさず、楽しくやっていきたい。
Quipperのロンドンのチーム
【連載バックナンバー】
第1回「DeNA起業に参加したのは南場さんと川田さんと珍道中を楽しみたかったから」
第2回「DeNAで山ほど失敗して学んだ新規事業企画のコツはないというコツ」
第3回「DeNAを辞めて起業するとは思っていなかったのに、なぜ学習サービスQuipperをはじめたか」
第4回「「よいエンジニアが見つかるまで起業しない」。Quipper出発はゼロからの仲間探し。」
第5回「起業から2年半たち、Quipper学習プラットフォームが形になってきた」