こうした2次元マップがあれば、上のように、誰もが自分自身はもちろんのこと、友人や家族、同僚を当てはめずにはいられない。

 これが第2の特徴だ。優れた描写は比較を促す。漠としていた関連性が浮き彫りになる。「あら、だからジョージと話していると、いつもリチャードを思い出すんだわ」というわけだ(この点で、性格検査には私たちがつい夢中になる不思議な中毒性がある)。

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 ビジネスパーソンが製品やブランドに対して行っていることも、性格検査とたいして変わらない。ツールを使って本質を洗い出し、理解しようとする。消費者に製品やブランドに対する認知度を尋ね、結果をプロットし、マトリックスを完成させる。

 お馴染みのポジショニングマップである。ブランドマネジャーは、ホテルなら価格やサービス、立地、ラップトップなら価格や機能、重さなど、製品に応じた尺度を用いてマップを描く。

 そこでは、消費者から見たスナップショットのみならず、競合との関係も露わになる。だからこそ、競争戦略の要となる。同じカテゴリーのあらゆる製品を1つのマップに落とし込むことで、自社製品と他社製品の強みと弱みを一気に比較できるのだ。

 これは消費者にとっても有効だ。序章に登場した気の毒な火星人を思い出してみよう。無数のシリアルが並ぶコーナーで、図のようなマップがあればどれほど役に立つことか。

 無意識にではあるが、この種のスナップショットは誰もが活用している。私が『USニューズ&ワールド・リポート』誌の大学ランキングを目にしたのは、確か20数年前だった。私は2つの点に驚かされた。

 第1に、その画期的な透明性。当時の大学は評判という漠然とした認知度に頼っていたが、同誌は授業料やSATスコア、教授と学生の比率など、大学の実態を暴露してはばからなかった。同誌がなければ、普通の受験生がこうした情報を得るのは不可能だっただろう。大学の内幕を初めて見せられたような気がした。

 第2は、大学間の相互比較。同誌ではデータがポジショニングマップのような図表に加工されており、いろんな角度から大学を比較せずにはいられないようになっていた。

 私たちは消費者として、常にこの種の比較ツールを求めている。何に関するデータであれ、多大な情報を非常に効率よく提供してくれるため、不思議な中毒性があり、やがてそれ自体が大きな力を持つようになる。

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 しかし、測るという行為は諸刃の剣になりかねない。陸上競技で足の速い選手の育成に力を入れるのは、走る姿ではなくスピードを測るからだ。何かを測定することは、それを重視すると決めたに等しい。尺度は特定の方向を指示するものとなり、競い合う群れが一斉にその方向に走り出す。