例えば、メルセデス・ベンツが情報発信基地として世界で初めてオープンした「Mercedes-Benz Connection」は、カフェやレストランを中心に営業し、従来のショールームのイメージを払拭しました。また、レクサスのブランド体験スペース「INTERSECT BY LEXUS」には車が一台しか展示されておらず、主にコーヒースタンドやライフスタイルショップを提供する空間として、レクサスのオーナー以外の人にも開放されています。

こうした高級車ブランドにおける新たな挑戦は、ショールームのなかにカフェやショップがあるのではなく、そのなかに車が展示されていることで、多様な人々が集う空間がラグジュアリーブランドへの入り口として機能することを表しています。

さらに、高級ファッションブランドでは都心のフラッグシップ店にカフェを設立することでラグジュアリー空間のソーシャル化を実現しています。銀座の「GUCCI CAFE」や表参道の「BVLGARI IL CAFE」は、単にラグジュアリーなカフェスペースとして営業しているわけではありません。GUCCI CAFEにはバリスタとして5年以上の経験を積んだ熟練の職人が丁寧に抽出するエスプレッソがあったり、BVLGARI IL CAFEには伝統的な技術でショコラティエが手作りするチョコレートがあったりと、ブランドが持つ職人芸へのこだわりに触れられる空間としても展開しているのです。

こうした例からもわかるように、日本でもラグジュアリーブランドのソーシャル化が進んでおり、高級ホテルへ波及するのも時間の問題のように思えます。今度はその具体的な見通しについて、二人の識者の意見をもとに検証してみましょう。

日本の高級ホテルにはロビー・ソーシャライジングのDNAがあった

ACE HOTELがシアトルに1軒目をオープンした2000年代前半から、そのコンセプトの斬新さにいち早く注目した日本企業があります。ホテルや飲食事業のプロデュースを中心に手がける「TRANSIT GENERAL OFFICE」です。

ちなみに、前出のMercedes-Benz ConnectionやINTERSECT BY LEXUS、そしてGUCCI CAFEの運営にも同社は携わっています。つまり、ラグジュアリーブランドのソーシャル化に関して、日本におけるエキスパートともいえる企業なのです。