「互いにラグジュアリーさを競い合うような過当競争はサステナブルな事業になりづらいと思います。今はなぜその場所にそのホテルがあるのかといった本質的な価値が問われるようになっている時代です。日本の高級ホテルは本来、地域に向かって開かれていた。そうやって街になくてはならない独自の地位を築いていき、ブランドとして認められるようになっていったのです。もし今、そんなソーシャライジングされた高級ホテルが現代的なデザインでオープンできたら、まさに一人勝ちの状態になるのではないでしょうか。Tablet Hotelsの代表が言うように海外からのニーズは確実にあるのですから、東京オリンピックがACE HOTELのような新しいホテルブランドを誕生させる追い風になるはずです」(同)

では、国内におけるニーズはどうでしょうか? そのことを考えるためには、2020年を見越した消費意識の変化について言及しなければなりません。

ラグジュアリーブランドも取り入れる消費者のシェア志向

ここに現代の消費意識に関するデータがあります。2011年に博報堂総合生活研究所が15歳~69歳の男女1659人を対象に行った「生活を楽しむために必要なものは何ですか?」という調査です。

そこで浮かび上がったのは、消費において家族や友人とのコミュニケーションを重視する傾向でした。「時間のゆとり」(12.4%)や「お金、経済力」(19.2%)を抑えて、「家族や友人、他人との関係」(19.7%)が1位となったのです。

年代別で見ても、10代から40代の各世代で「家族や友人、他人との関係」がトップとなっており、同研究所は「生活者は家族や友人とのつながりを、生きるための支えであると同時に、世界を広げ、楽しさを呼び込んでくれるものと考えている」と結論づけています。

この傾向を消費研究家の三浦展氏は、「シェア志向」と名づけています。自分が好きなものを買い求める個人主義的なものよりも、共感・共有をベースにしたつながりを大切にする消費活動です。この流れはソーシャルメディアの普及とともに広まっており、2020年にはより一般的な価値観として定着するものと見られています。