読む人の数だけ解釈の数があるような本を作りたかった
――読者からの反響はいかがでしょうか。
瀧本 読む人によって感想がまるで違うのがこの本なんです。ある人は「これまでで一番やさしい本だ」と言ってくれるし、ある人は「これまでで一番厳しいことが書いてある」という。
ある政治家は「これは政治家のための本だ」と言ってくれるし、あるNPOの人は、「まさにNPOのための本ですね」と。あと大企業の管理職の人も「これは大企業が変革する組織に変わるための本だ」と言ってくれます。また、スタートアップ企業の組織論として評する方もいます。それだけ感想がバラバラなのが、ある意味この本の特徴です。
――それは瀧本さんの意図通りでしょうか
瀧本 はい。皆が自分の都合のいいような読み方をしてもらいたかったんです。
一言で言うと、小説のような見せ方をビジネス書でしてもいいんじゃないかという目論見がありました。文芸作品って読む人によって解釈が違うじゃないですか?この本もそれを目指しました。多様な解釈があるという意味では、これも『七人の侍』と一緒です。読者が自分の文脈でこの「テクスト」を解釈し、楽しんで役に立てていただければと思います。
ビジネス書というマーケットがいま飽和していて、装丁もワンパターンになったし、僕の前の本も似たような装丁の本がわんさか出ました。ビジネス書が情報消費的なものになって、電子書籍でもいいという時代になってきた。それに対して僕はビジネス書のもっている可能性をさらに広げたかった。文芸書にように見せるんだけど、内容を薄くして紹介するのではなく、むしろ内容を重厚にする方向でつくりました。そうすることで、折に触れて再読していただくと、自分の視点、目線の変化によって、そのたびに再発見がある、そういう本にしたかったのです。
――では目論見はある程度、成功していますね。
瀧本 はい。反響を見ると、その意図は達成されつつあるようです。いまの日本は不確実な状況のなかで非定型の問題を解決しなければならないという状況にあります。それを解決するためには、かなり特殊なチームをつくらないといけない。それがこの本の一番のメッセージなんです。この課題は日本のあらゆるところにある課題です。この本の読者は、きっとこのままではダメだと思っているすべての人でしょう。それだけいまの日本は改革が迫られているし、その必要を感じている人が多い。ただどうすればいいかわからないというのが現状だと思います。