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いま、人類学の手法を応用した「エスノグラフィック・マーケティング」に注目が集まっている。P&Gは「リビン・イット」と「ワーキン・イット」というプログラムで、またノキアはインド市場に参入する際に、この手法を用いた。そのほか、インテル、マイクロソフト、ヤフー、IBM、ゼロックス、フィリップスなども積極的に推進している。エスノグラフィック調査の基本は、消費者に密着し、あらゆる先入観や既存の知識を捨て去り、直接観察したりインタビューしたりして、その全体像を明らかにすることにある。その結果、従来の調査手法では知りえなかった問題やニーズが見えてくる。こうしてあぶり出された情報は、まさしくイノベーションのシーズであり、また人間中心の製品開発を促すものである。本稿では、架空のプロジェクトを通じて、エスノグラフィック調査のやり方について解説する。
「エスノグラフィック」とは何か
「どれほど時をさかのぼり、どれほど空間的に隔たったところに例を求めても、人間の生活と活動が行われる枠組みは共通の性格を持っている」
昨2009年に満100歳で他界したフランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースは、未開社会の思考や行動と西洋社会のそれとの間には基本的な違いがないことを示し、世のなかに大きな衝撃を与えた。彼ら人類学者たちは、未開の地に入り込み、そこに住む人々と生活を共にすることで、特異に見える物事の背後にある共通の構造を見出そうと努めてきた。