ザッポスという社名は、スペイン語の「ザパトス」(靴)にちなんだもので、文字どおり靴の販売を生業としているが、同社の出発点は、「靴を試し履きせずに買う人などいるはずがない」という固定観念への挑戦だった。そこで、このeコマース企業は「最高の顧客サービスと顧客経験を提供する」ことに集中し、送料と返品の無料化、1年間の返品期間、無料翌日配送など、常識破りの施策を実施してきた。何より特筆すべきは、コール・センターの顧客サービスである。何千種類もの靴選びに6時間つき合う、深夜営業のピザ屋を探して教える、奇癖の持ち主にも快く対応する等々、同社の顧客サービスは、全米のメディア、ブログ、SNS、ツイッターなどで絶賛されている。その業績も、ドットコム・バブルの崩壊、リーマン・ショックなどの影響にもめげす、創業以来ずっと右肩上がりを続け、小さなeコマース・サイトにもかかわらず2009年の総売上高は12億ドル近い。本稿は、ザッポスCEOのトニー・シェイが著したDelivering Happiness(現在同社の親会社であるアマゾンで第1位に輝いたベストセラー)の抄録である。