包括的なアプローチは通用しない

 製品に不具合が生じたり、企業が過失を犯したりした場合、顧客の見る目と購買意思決定に悪影響を及ぼす。もちろん、ビジネス・リーダーたちもそのことを承知している。とはいえ、不祥事の余波が予想以上に大きかったり、非難の度合いが企業によって大きく異なったりすると、戸惑ってしまうことが多い。

 2008年の終わりに中国の乳製品業界で生じた不祥事について考えてみたい。汚染された牛乳や粉ミルクなどのせいで、約30万人が健康被害を受け、数人の乳児が死亡した。牛乳のタンパク質含有量をかさ上げするために、メラミンが添加されていたのである。

 当初、中国の廉価乳製品の最大手で石家荘(河北省の省都)にある三鹿集団(サンルー・グループ)の製品が一連のトラブルの原因と思われた。しかしまもなく、さまざまな企業──なかには意図的な企業もあった──がこの一件に関与していることが明らかになった。WHO(世界保健機関)は「食品安全を脅かす近年稀に見る重大事件」と声明した。