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入念なマーケティング調査にもかかわらず、新製品の9割以上が失敗に終わるといわれる。「いったい何のための調査なのか」と嘆くのも無理からぬ話である。その最大の原因は「顧客は無意識にうそをつく」ことにある。しかし、脳はうそをつかない。言い換えれば、脳は言語には表れない情報を持っている。これを利用することで、顧客をこれまで以上に正しく理解し、製品開発やプロモーション、価格戦略などの成功率を向上させようというのが「ニューロ・マーケティング」の目的である。くわえて、顧客の真の姿を探求することによって、これまで気づかなかった視点が得られることだろう。神経科学はまだ発展途上にあるとはいえ、脳研究者たちはビジネス領域にも関心を向け始めており、実際ニューロ・マーケティングに取り組んでいる企業も登場している。本稿では、ニューロ・マーケティングの代表的な実験を紹介しながら、現状と今後の課題、そして必要性について解説する。
消費者は無意識にうそをつく
ジョージ・ルーカス監督の映画『アメリカン・グラフィティ』に、馬蹄形をした奇妙なフロント・グリルの車が登場する。この車の名は〈エドセル〉というが、マーケティング史上最大の失敗の一つとされている。
1955年、〈サンダーバード〉の大ヒットに気をよくしたフォード・モーターは、ゼネラルモーターズの〈ポンティアック〉や〈オールズモビル〉に対抗する中級車を開発するために、「Eカー」(実験車の意味)プロジェクトを立ち上げ、57年9月、〈エドセル〉を上市する。なおこのブランドは、創業者ヘンリー・フォードの息子であり、43年に他界した前社長エドセル・フォードにちなんだものである。