人間であれ組織であれ、時に失敗するときもある。しかし、「もったいない」と撤退すべき事業をそのまま続けて、会社が倒産したならば、そのとき本当にすべてのものは埋没してしまうのだ。「『出来事の意味は後で決まるのだから、あれがあったからこんな風になれた』と思えるように行動していこう」という意思が未来を切り開き、埋没コストを意味あるコストに変えていくことができるのである。

求めるべきは適切な「問い」

 あなたは次のような問いを立てたことはあるだろうか。

 「それは埋没コストという過去に囚われた意思決定ではないか?」「我々の本当の目的は何なのか?」「この方法は目的と状況に照らして本当に有効なものになっているのか?」「この失敗を後から振り返って意味あるものにするためにはどうすればよいのか?」

 人は「答え」を求めようとする。しかし、「正しい答え」がどこかに転がっていたり、本に書いてあったりすることはない。なぜなら、その人が置かれている状況によって「正解」は異なってくるためだ。求めるべきは「答え」ではない。適切な「問い」こそが、組織をまっとうな方向に導くのである。あなたの組織では、適切な「問いの立て方」のトレーニングや研修を実施したことはありますか?

 

 

ほぼ日刊イトイ新聞でも西條先生の連載

「西條剛央さんが洞窟で刀を研ぎ澄ましている。」が公開中です。

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【連載】早稲田大学ビジネススクール経営講座

ほんとうの「哲学」に基づく組織行動入門 記事一覧

第1回 「哲学」がMBAの人気講義になるのはなぜか?

第2回 なぜ「答え」ではなく「問い」が大事なのか?

第3回 組織に蔓延する「前例主義」を哲学でどう打ち破るか?

第4回 星野リゾートと無印良品に共通する本質を捉える思考法 

第5回 天才じゃなくても「本質」は掴める