本質観取を行う際のチェック項目
「キーワード」を探っていく際には、次のような観点を意識するとよい。なぜそう思うのか理由を述べながら議論してもよいだろう。
□そのコトバをそのコトバたらしめているようなポイントは何か(例 人間を人間たらしめているポイントは何か?)
□それに共通して当てはまるものは何か?(例 すべての人間に当てはまるものは何か?)
□似たコトバとの違いはどこにあるのか?(例 人間と他の動物との違いは何か?)
□それと反対のコトバは何だろうか?(例 人間とコンピューターの違いは何か?)
□そのコトバをどういうときに使うだろうか?
□そのコトバは何のために使われるのか?
次第に、本質らしきもの、つまり「その言葉をその言葉足らしめているような重要なポイント」がみえてきたら、「そのコトバが使われる様々な文脈でしっくりくる定義になっているか」という観点から吟味し、その普遍洞察性(いつでもどこでもそれで洞察することができるか)をチェックしていく。ちなみに「人間とは人間的な存在である」というのは同義反復となっており明晰になっていないためダメである。本質観取とは「そのコトバを違うコトバで言い換える」作業となる。
本質観取ゲームで考える「挨拶の本質」
上記を頭に入れた上で、実際にMBAの授業で行った本質観取ゲームの例をもとに、実践例を紹介しよう。ここでは「挨拶とは何か」に関する事例を取り上げる。一般的に挨拶は大事だと言われるし、しっかり挨拶をするよう奨励している会社は多い。しかし、挨拶の本質とは何かを伝えている企業は聞いたことがない。あらためて考えてみると、街中ですれ違う人全員に挨拶する人はいない。他方、登山しているときは知らない人にも挨拶することもある。会社の休憩室でも挨拶するべき人としないほうが自然な人がいたりする。人はなぜ挨拶するのだろうか。挨拶とは一体何なのだろうか。ふと浮かんだこの問いを受講生達に投げかけると、次のような答えが出てきた。
「朝起きた時、御飯食べる時、帰る時などの節目でするもの」「これから何かをするという合図」「存在を認める行為」「好意をあらわす行動」「一番簡単なコミュニケーション手段」「相手とのコンタクトの第1歩目」「お互いの存在を認め合うこと」「相手との基本的な人間関係を構築するための方法」「習慣」