研究結果を見れば、ケロンドやエイビーだけが特別なわけではないとわかる。デューク大学の研究者ビベク・ワドゥワは、成功している技術系ベンチャー企業549社を調査し次のことを明らかにした。「成長産業(コンピューター、ヘルスケア、航空宇宙など)で大成した起業家の平均年齢は40歳。成功した起業家の数は、50歳以上は25歳以下の2倍。成功者の大部分(約75%)は起業時にその業界で6年以上、うち過半数は10年以上の経験がある」(英語記事)。また、カウフマン財団のデータによると、アメリカの起業家で最も割合の高い年齢層は55~64歳のグループに移行し、55歳以上の起業家は20~34歳のグループよりも起業で成功する確率が約2倍であるという(英語記事)。

 40歳以上の層は、自分自身のためだけでなく、次の世代に関わる仕事に従事する傾向が高いことも特徴だ。32歳でゴールドマン・サックス史上最年少かつ初の女性パートナーとなったジャッキー・ゼイナー(47歳)は、40代に入ってからの人生をウィメン・ムービング・ミリオンズ(Women Moving Millions)のCEOとして、女性や少女のための慈善活動に捧げている。ハワイの国際交流機関イースト・ウェスト・センターのディレクターであるキャロル・フォックス(69歳)は老後の人生を、中国とアメリカにまたがる慈善活動のプロジェクトに捧げており、中国の富裕層に家族という枠を超えて社会にどう貢献すべきかを教えている。報道写真家のパオラ・ジャントゥルコ(73歳)は、祖母の活動家たちによるムーブメント(Grandmother Power)を立ち上げ、世界中の祖母たちに積極的に教育や健康、人権問題に関わるよう啓発している。

 このような人々の魅力的な活動を見れば、55歳以上、さらには65歳以上の人々のほうが、25歳の若者よりイノベーションを起こす可能性を秘めているとする研究結果にも納得がいくだろう(英語記事)。実際、イノベーターは老いて磨きが掛かるのだ。

 大企業は、高賃金や条件のいい医療・退職手当という形で社会に経済的な安定をもたらす。これと同様に、経験豊富な従業員は、職場の知的・精神的支柱となり、イノベーションにつながる専門知識を提供してくれる。破壊的イノベーションとは、だれも望んでいない場所(低価格帯)に参入したり、だれも想像しなかった分野(新市場)に進出したりすることだ。エリクソンの定義による第7段階に入った人々は、新たに何かを創造することを単に「素敵なこと」とは考えていない。彼らにとってそれは、精神的に必要不可欠なことだ。「何かを創造し、人生を価値あるものにしたい。たとえそれが孤独や恐怖を伴うとしても」――この衝動が、彼らのイノベーションを駆り立てるのだ。

 データがそう示しているにもかかわらず、一部の企業は彼らを活用することなく独立・開業へと向かわせている。もしくは、その前に解雇してしまっている。こうした不遇な即戦力たちの意欲を活用できる賢明な企業こそが、競争で優位に立てるのではないだろうか。あなたの会社がそうであってほしい。

※訳注:文中の人物の年齢は、本記事執筆の2013年6月時点。


HBR.ORG原文:Entrepreneurs Get Better with Age June 27, 2013

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ホイットニー・ジョンソン(Whitney Johnson)
クレイトン・クリステンセンの投資会社、ローズパーク・アドバイザーズの共同創設者。現在は独立コンサルタントとして活躍する。著書にDare-Dream-Do: Remarkable Things Happen When You Dare to Dreamがある。