リーチしたい人々を増殖者と見なし、コンテンツを「バイラル」ではなく「拡散可能」と考えれば、以下のような非常にありがちな罠にはまりにくくなるはずだ。

第1の過ち:助走運転せず、最初から全力を投じてしまう
 何が拡散するかをあらかじめ予測するのは難しい。手間と時間をかけて動画やインフォグラフィックを作成してSNSで公開し、宣伝広告費を注ぎ込んでトラフィックを増やそうとしたのに、まったく広まらない――あなたもこんな経験が、1度ならずあるのではないだろうか?

 高速ギアにシフトする前に、勢いをつけておく必要があるのだ。最初から多額の投資をするのではなく、テスト用の予算を確保する。そしてさまざまな記事や動画、チャート、ヘッドラインを比較的少数のマルチプライヤー候補に提示してみよう。拡散を最大限に加速させるには、まず低いギアから始め、何かが通常よりも速く拡散しているのを確認したらギアを上げる、というのが最善のやり方だ。拡散が見られなければ投資をやめ、別のものを試してみよう。フェイスブックでは、自社ブランドのタイムラインには広告を表示せずに、少人数のユーザーだけに投稿を見せることでテストを行う「ダーク・ポスト」という方法がある。

第2の過ち:ユーザーにシェアを促す際、シェアされること自体を最終目的としてしまう
 コンテンツそのものが「バイラル」だと考えていると、「人々が自動的にシェアしてくれるはずだ」と期待してしまう可能性がある。もし発信者が非営利団体で、不平等や環境汚染、ガンなどの深刻な社会問題について人々の意識を高めようとしているのなら、それでもいいだろう。しかし、たとえばITサービス企業などであれば注意が必要である。ほとんどの人は、シェアという行為自体を目的とするわけではない。拡散可能なコンテンツとは、シェアに値するだけの目的や意義があるものだ。

 自社のブランドに関連するトピックや社会的意義の中から、情熱をかき立てるようなものを厳選したうえで、人々を巻き込む方法を探ろう。受け手自身が何らかの方法で参加できるコンテンツならば、拡散される可能性が高い。たとえば社会的な意義に関する宣言や嘆願をして支持・行動を促すなど、多くの人を巻き込む仕組みを考えるのだ。単に「拡散希望」と頼んでも、理由を示さなければ効果がない。

第3の過ち:「公開」をクリックしたら仕事完了、と考えてしまう
 価値があるのに一握りの人にしか閲覧されないコンテンツが、ウェブにはそれこそ山のようにある。どんなに素晴らしいストーリーでも、古ければウェブでは相手にされない場合が多い。検索やSNSのアルゴリズムでは新鮮さが重要なファクターなので、古い情報はマルチプライヤーに見つけてもらえないのだ。コンテンツの測定と発信を支援する会社、シンプルリーチの調査によると、フェイスブックに載った記事がSNSで引き合いに出される合計件数の半分は、投稿されてから9時間以内に達成されてしまう(ツイッターではさらに速い)。

 したがって、ストーリーの寿命を延ばすためには、ツイートや投稿を追加して別の角度から光を当てる、進展を報告する、マルチプライヤーに働きかける、といったアクションが必要である。マクラッケンは、人々を「消費者」ではなくマルチプライヤーと見なすことによって、「仕事を完了できるかどうかは彼らにかかっている」ことが明確になると指摘する。