動物に関する記事を発信し動物愛護を促進するサイト、ドードー(TheDodo.com)の例を挙げよう。科学者らが太平洋沖で103歳のシャチを発見したこと、そしてそれが水族館のシーワールドにとってなぜ都合の悪いことなのかを報じた記事は、最初の1週間でフェイスブックの「いいね!」を90万件獲得した(英語記事。シャチの寿命はおよそ50~60年とされているが、シーワールドを含む水族館で生まれたシャチの平均寿命は4.5年。その一因として、若すぎる段階で繁殖をさせ、さらに継続的な繁殖を強制しているからであるという。記事では水族館へ行くのをやめるよう読者に署名嘆願している)。
この拡散の速さは見事だ。しかしもっとすごいのは、100人の読者がドードーのゲストブログに長文を投稿し、うち20本がフェイスブックでそれぞれ5万件を超える「いいね!」を獲得したことだ。マルチプライヤーたちの投稿が生んだシェアの合計は、元記事のシェアを上回ったのだ。元記事へのトラフィックは減ってきているものの、関連記事全体では、2カ月後の時点でも相当量のトラフィックをドードーにもたらしており、署名嘆願への賛同も100万件に近づいている(6カ月後の現在は109万件を突破)。
第4の過ち:マルチプライヤーとの関係を築かない
「バイラル」は往々にして、はかないものだ。広くシェアされた動画にたまたま出くわした人が、その一部分を見たとして、その人の存在をマーケティング担当者が知るチャンスはない。関係はそこで終わってしまうのだ。それよりも、マルチプライヤーの存在を把握し、その人となりを知るべきである。そして頻繁にシェアしてくれるように働きかけるのだ。
金銭的な見返り(「5回ツイートしたらコーヒー1杯無料」など)を提供しなくても、大きな成果を得ることはできる。単に、彼らの存在を公式に認知すること――たとえば自社のウェブサイトで紹介したり、SNSでメッセージを送ったりという行為――によって、マルチプライヤーはさらなる増殖活動にいそしんでくれる場合が多いのだ。機会を見て彼らのeメールアドレスを知ることができれば、役に立つ告知やサービスの提供、何らかのアクションの依頼などを通じて、さらに関係を深めることができる。
コンテンツをバイラルではなく拡散可能と考えるようにすれば、自社とコミュニティとの関係を改めて重視することにつながる。メッセージを増幅させるうえで、それは優れたコンテンツをつくるのと同等に重要なことなのだ。
HBR.ORG原文:4 Mistakes Marketers Make When Trying to Go "Viral" August 6, 2014
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デイビッド・スピッツ(David Spitz)
レベルマウス(RebelMouse)の社長兼COO。ソーシャル、モバイル、ウェブのコンテンツ・プラットフォームを提供する同社は、GE、Tモバイル、インテル、ロレアルなどのソーシャル・マーケティングを支援する。