ジョン・ガードナーが普遍的なアドバイスを授けた当時に比べ、現在はいっそう目まぐるしい時代となった。リーダーたちの課題は、勢いや力、謀略で競争に勝つことではない。重要なのは、大小さまざまな面で考え抜くことで競争に勝ち、未来に対する独自の視点を持ち、その未来にだれよりも速くたどり着くことだ。私が知り合った最高のリーダーたちは、大胆な思考の持ち主であるのみならず、飽くなき学習者だった。
私がこれまで出会った中では、広告会社の幹部ロイ・スペンスがおそらく最も好奇心の強い(そして面白い)人物である。最近、その彼がThe 10 Essential Hugs of Life という、成功するための愉快で心打つ本を出版した。「失敗にハグしよう」「恐怖心にハグしよう」「自分にハグしよう」といった気軽に実践できて役に立つアドバイスの中に、「初めてのことにハグしよう」という項目がある。新たな刺激を与えてくれるものを追い求め、自分には理解できない研究に取り組んでいる研究所を訪れたり、参加する予定のなかったカンファレンスに足を運んだりしてみようという勧めだ。「子どもの頃は、毎日が初めてのことや新しい経験ばかりだった。年を重ねるにつれ、初めてのことはどんどん減っていく。若さを保ちたければ、新しいことに挑戦し続けなければならない」とスペンスは述べている。
スペンスは、刺激を受けた経営思想家の1人ジム・コリンズのエピソードを紹介している。コリンズは若くしてスタンフォード大学の教授となり、その際に同僚だった博識なジョン・ガードナーにアドバイスを仰いだ。そこでガードナーから学んだのは、「新しいことをする分だけ、人間は若くいられる。つまりその日、その週に何回“初めてのこと”をしたか」であるという。教育者に尋ねれば、だれもがこの考えに賛同するだろう。人間は、自分とまったく違う人と出会った時に最も多くを学ぶのだ。
ここで、自分に問いかけてほしい。皆さんは大半の時間を、自分とそっくりな人ばかりと過ごしていないだろうか。同じ会社の同僚や、同じ業種の仲間、同じ職業や地域の友だちなどだ。
みずからを成長に駆り立て、自分の古い考えに挑戦するためには、強い決意が求められる。権力と責任を伴う立場にある者であれば、なおさらだ。リーダーはそれゆえに、2つのシンプルかつ核心的な問いを自問しなければならない。第一に、自分の組織および自分自身は、世界が変化するスピードに遅れず学習しているだろうか。第二に、面白い人間であろうとするだけでなく、好奇心を持とうとしているだろうか。「本当に大切なのは、知っていることについて後から学ぶ何か」であることをお忘れなく。
HBR.ORG原文:The Best Leaders Are Insatiable Learners September 5, 2014
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ウィリアム・テイラー(William C. Taylor)
『ファストカンパニー』誌の共同創刊者。最新刊は『オンリーワン差別化戦略』(ダイヤモンド社)。既刊邦訳に『マーベリック・カンパニー 常識の壁を打ち破った超優良企業』(日本経済新聞出版社)がある。