グローバル革命とは、このような20世紀の終盤に発生した三つの大きな革命のうねりが合わさった巨大な経済・社会構造の変革である。言うまでもなく、グローバル革命は、全ての企業に新たな成長の機会をもたらすと共に、その戦略・組織・オペレーションに抜本的な革新を求めることになったのだ。
たとえば、膨張する新興国市場の最前線の活動を的確にサポートするためには、効率的なサプライチェーンや機動的な管理体制を迅速に整備しなければならない。また、有力な海外人材を採用し、十分に活用するための柔軟で開かれた組織に進化することが必要だ。企業間の競争も飛躍的に激化している。これまで住み分けていた先進国のプレーヤ同士での熾烈な市場開拓競争に勝たねばならないばかりか、急速に力をつけ始めているローカルプレーヤとも戦わなければならない。これら競合に対抗するためには、商品の開発スピードとコスト競争力を一層上げなければならなくなった。また、経営のスケールもスピードも劇的に向上させることが求められている。そのためには、M&Aなどの資本政策を駆使することや、先端的なIT技術を徹底的に活用すること、などグローバル革命の果実を積極的に経営に取り入れていくことがグローバル市場で企業が持続的に発展していく上で不可欠なのである。
グローバル革命に乗り遅れた日本企業
さて、日本企業の多くが、このグローバル革命に乗り遅れて、企業の成長力や収益力が劣化したとされている。ここで、その原因を探ってみたいと思う。
まず第一に、客観的認識や洞察の欠落があった。かつてアジアの経済発展を考える時に、日本を頂点とする「雁行モデル」が持てはやされた時期があった。実際、多くの日本の経済人はこれを鵜呑みにして、新興国の経済発展は日本を後追いすると考えていた。したがって、日本向けに開発された商品や販売手法は、そのまま新興国に適用できると安易に構えていたのだ。同じくよく言われたことに、日本の消費者は世界で最も要求基準が高いので、国内で鍛えられた商品は国際競争力がある、というものだ。現実は、新興国においてスマートフォンやインターネットが一気に普及するなど、常に日本が先行するという雁行モデルは、ものの見事に崩れ去った。また、日本の消費者ばかりを見て商品開発を行っていた結果、日本製品はいわゆるガラパゴス化の罠にはまり、グローバル市場での競争力を失ってしまった。