外向的で社交好きな従業員は、他者との交流に時間を割いているうちに自身の生産性を落としてしまうというリスクを抱えている。この問題は、オフィス環境に手を加えることで軽減できる。本誌2015年3月号の特集「オフィスの生産性」関連記事。

 

 このところ、とても内向的には見えない人たちが、自分は内向的な人間であるとカミングアウトするようになっている。たとえば私が最近知り合ったある女性は、イベント前の交流会の最中、愛想よくおしゃべりしながらも「実は、自分は内向的な人間です」と耳打ちしてきた。仕事で成功を収めるには、もっと外向的な振る舞いを身に付けねばならないと彼女は感じていた。そう考えているのは彼女だけではない。

 近頃は、だれもが自身の内向的な性向を語りたがる。それにはもっともな理由がある。『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』の著者スーザン・ケインは2012年、TEDカンファレンスで内向性の長所について講演した。それ以来、世間の人々は内向性がいかに重要であるか、それが行動、感情、そして意思決定にどう作用するかを、より意識するようになったのだ。内向型人間は気が弱いのではなく、ただ刺激に対してより敏感なだけだ――今ではこのことが広く知られている。思慮深い彼ら彼女らは、会話の中心になったり注目を集めたりすることはないけれど、孤独を好むその性向は深い洞察や創造性につながる。内向的であることはもはや、直したり隠したりすべき問題ではなく、むしろ一目置かれるようになっている。そして企業は、内向的な社員が切望する、独りになれる場所をいかに提供できるかを模索している。

 一方、外向的な人間はそれほど注目を集めていないようだ。このタイプは社交を好み、1日のかなりの時間を喜んで他者との交流に充てるので、オープンな空間で働くことが理想のようにも思われる。我々スチールケース(世界的オフィス家具メーカー)の職場では、外向型を見つけるのはとても簡単だ。オープンなコミュニティ・スペースに行けばいい。コーヒーショップの雰囲気と職務環境を融合させた「ワークカフェ」では、従業員は協働したり、個人で作業したり、同僚と話したりできる。そこは当社キャンパスのハブであり、見たり見られたりするには絶好の場所、いわば外向的な人にとってのパラダイスだ。

 しかしいかに外向型でも、大量の刺激を浴びると疲れ切ってしまう。私たちは大量の情報に翻弄されている。『幸福優位7つの法則』の著者ショーン・エイカーによれば、人は毎秒1100万ビット以上の情報を受け取っているが、脳が意識してまともに処理できる情報量は約40ビットしかないという。今日のテクノロジーによって、仕事はどこへでも付いて回る。寝室や浴室といった、かつては仕事から逃れられる聖域だった場所にまでだ。チームと協働する時間はますます長くなっているため(時には1日の全労働時間にわたる)、個人のタスク処理により多くの時間が必要となっている。

 長らく仕事と私生活の区切りを大切にしてきたフランスやドイツのような国でさえ、今や仕事が夜間や週末に入り込むようになった。あらゆる場所で仕事のペースが激化している。それはつまり、外向型を含めすべての人々が、仕事を済ませたり一息ついたりするためのプライベートな空間を必要としているということだ。