共創コミュニティの直面する3つの課題と処方箋

課題1) 誰に何を聞けばいいのか

 共創コミュニティが直面する第1の課題は、誰に何を聞けばいいのかわからないという問題である。一般にオープン・イノベーションは、問題を選定し、探索し、評価し、管理するというプロセスをたどる。そこで、最初の出発点として、問題を正しく選び、探索の目的や範囲を戦略的に決定することが重要である。

 まずは誰に聞くか、である。多数の消費者を容易に集められるからこそ、目的を明確にしたサンプリングが必要だ。幅広くリクルートするのか、自社のコアなファンだけに絞るのか。前者の方が未知の可能性は広がるが、自社へのコミットメントが低いため、マネジメントも難しい。後者は、自社ブランドの主要顧客に詳細な意見が聞けるメリットがある一方、コアなファン層ゆえの意見に偏り、一般ユーザーに広がらないリスクがある。それぞれに限界があることを理解することが第一歩だ。万能薬は存在しない。

 もう1つのポイントは、何を聞くかである。テクノロジー・インバウンド型オープン・イノベーション(TI型)では、技術のフェーズに応じて、外部に求める技術をいかに明確化して探索するかが鍵だとの指摘がある。

 たとえば、ビール業界で「ビールの喉越しをよくする技術」を募集しても、同じ業界や競合他社の技術者から似たようなアイデアが出るだけで、革新的な発見にはつながりにくい。そこで、喉越しをビールの物性値や人間の感覚と結びつけ、「モノを飲み込んだ際の喉の反応を評価する技術」と転換して募集すれば、嚥下(えんげ)障害や筋肉の動きを研究する技術者などから、幅広い提案が期待できるという(注1)。

 MI型の場合にも、同じような問題がある。何をどういう聞くかによって、得られる成果が違ってくる。いくら簡単に何度も聞けるからと言って、消費者に不満や要望を直接聞くだけでは、画期的な商品は生まれにくい。この点は、次に述べる製品の革新性の問題と関連している。