前述の仮定を続けよう。経営陣は考案されたソリューションすべてを検討してから、たとえば第4チームが開発したレコメンデーションのプラットフォームに基づき、「ザッポスの顧客向けの高度なファッションサービス」を立ち上げるかもしれない。ファッションの良し悪しについて、そしてその衣料品が必要とされる根本的な理由について、顧客からの情報が蓄積されていくにつれこのサービスは精度を増していく。また、より利益率の高い新規顧客を引き付けるための商品推薦方法をザッポスは学んでいける。こうして、このサービスはザッポスの市場シェア拡大を後押しすることになる。
上記が想定どおりに機能すれば、ここで例示したホラクラシーによって、新しいビジネスのやり方を見出すための大規模な実験が可能になるかもしれない。それが成功すれば、純粋な新規成長が生まれるだけでなく、ザッポスを今以上に偉大で破壊的な企業にするだろう。
既存の有力企業にとって、破壊的なライバル企業に対抗するために自社を変えていくことは、いまだに賛否が分かれる課題だ。コンサルティング会社のイノサイトが最近実施したアンケート調査によれば、大企業の回答者のうち、「破壊的変化の被害を回避するために、5~10年以内に自社を変革できる」と考えている人の割合はわずか36%だった。
既存企業で利益の原動力となっている効率性が、もし破壊的なライバル企業にとっては不都合なものであるなら、この調査結果は気がかりである。その場合はライバル企業がよりいっそうの脅威となるかもしれない。もしザッポスがしばらくの間、効率性を優先せずにホラクラシーを用いることで、既存企業(メイシーズ、アン・テイラー、メンズ・ウェアハウス等)に引けを取らない地位へと迅速に迫る方法を見出したらどうなるだろう。もし他の破壊的な企業が、それぞれの業界でザッポスの新しい経営手法に倣えばどうなるだろう。破壊的変化に対処するにはあと数年の猶予があると見込んでいる多くの既存企業は、強力な不意打ちを食らうことになるかもしれない。
HBR.ORG原文:Zappos and the Connection Between Structure and Strategy June 03, 2015
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フアン・パブロ・ヴァスケス・サンペレ(Juan Pablo Vazquez Sampere)
スペイン・マドリードにあるIEビジネススクールの教授。経営管理論を担当。