「この絵を描いて、私の中で世界選手権が終わりました」

 描き終わった絵は、KUNIさんがそれぞれ額装してくれます。その様子を眺めながら、慣れない作業を終えた参加者は、解放感に包まれています。坂根さんは、布巾で手をぬぐいながら、「ふだん使っていない頭を使ってスッキリした」と言い、前田さんは「おなかいっぱい、頭が」と、笑顔でため息。最後は、額に入れた絵を並べて、参加者全員で鑑賞します。

 ワークショップの冒頭と同じく、ポストイットでつけられたコメントを読み上げますが、今回は最後に本人が絵に込めた想いを語ります。

 最初は岩谷さんの絵。「つながり」というコメントを寄せたのは前田さんです。「ふたつの線がからまって、先までつながっているように見えます」。それ以外にも「ハーモニー」「協調」と、岩谷さんの人柄が浮かび上がるコメントが続きます。それを聞いて、岩谷さんが絵を手に語った想いは「チームワーク」。「私たちは秘書なので、芯を持ちつつ、優しい心も持ちつつ、それぞれ交わりを持って向上していくというイメージを表現しました。タイトルは『和』です」。

 参加者は岩谷さんのやさしさに普段から触れているのでしょうか。おお、という声と共に、納得の拍手が起こりました。

 続いては前田さんの絵です。「やわらかい」「規律」という感想の中で、「融和」というコメントを出した佐藤さん。「いろいろな層が同系色で固まっているので、融和をイメージしました。全体的に暖色系を使っていて、柔らかい雰囲気が出ていると思いました」と語ります。それを受けて前田さんが語ったのは、「思いやり」の大切さ。

「私は今、坂根さんの秘書をしています。右下の角にいるのが坂根さんだとすると、坂根さんを優しさと思いやりで包み込む。とはいえ私にも熱い感情があります。でもそれは元気と明るさで覆って、あまり見せないようにしよう、としているイメージですね」

 これに対し、「ということは、自分を相当殺しているってことか?」と坂根さんから軽いツッコミが。全員大笑いです。相談役と秘書のこんな会話から、コマツという会社の普段の雰囲気が伝わってくるものです。前田さんのタイトルは「つつむ」です。

 次は佐藤さん。坂根さんは「一歩一歩確実に進む」という印象を受けたそうです。

「中央に伸びる黄緑色の部分が、長い道に見えたんです。その道程に、ひとつひとつ、着実に何かを残していっているというイメージでしたね」。「一本道」「困難にめげず進む意志」といったコメントも並びました。

 働くうえで「一生懸命、まじめ」を大切にしているという佐藤さんはこう言います。

「みなさんが言われたように、これは一本の道です。そう思って描き始めましたが、はたして自分は本当に一生懸命なのか。書きながら迷いが生まれました。道の途中にある丸い物体は迷いの象徴です。でも、迷いがありつつも、何とかまっすぐ進んでいきたいという思いを込めて描きました。タイトルは『がんばろう』です」

 そして、最後の最後まで粘った谷本さん。岩谷さんは、谷本さんの絵から「深い愛、パワー」を感じたといいます。

「中心にある丸いものを、下にある赤い部分がどっしりと受け止め、包んでいるように感じました。そこには力強さも温かさもある。そんな印象を受けたんです」

 KUNIさんは、谷本さんの絵が「描き始めから最終形に向けて、大きく変わっていった」と指摘します。どんな風に変わっていったのでしょうか。