ステップ1:ストレスを認識する
ストレスとの付き合い方を変える第1のステップは、その存在を把握することだ。否定したりくよくよ悩んだりする代わりに、直面しているストレスに名前を付けてしまうとよい。たとえば、「息子の学業成績が振るわないというストレス」「年度末の決算が心配だというストレス」「夫が最近受けた健康診断の結果が心配だというストレス」を自分は抱えている、と自覚するのだ。
神経科学者マット・リーバーマンの研究結果によれば、ストレスに名前を付けて認識するだけで、脳内の反応領域が、自動的・受動的な部位から、より意識的・意図的な部位に移動するという(英語論文)。ある実験で、脳スキャンを受けている被験者にネガティブな感情を引き起こす画像を見せ、その感情に名前を付けるよう求めた(怖い、腹立たしい、など)。すると神経活動が、扁桃体(感情に深く関わる部位)から前頭前皮質(意識的・意図的な思考を司る領域)に移動した。言い換えれば、ストレスを意図的に認識することで、情緒的な反応を抑えて、より適切な対応ができるようになるわけだ。
自分のストレスを認識・把握すべきもう1つの理由は、ストレスから逃げることが結局は逆効果になるからだ。我々がピーター・サロベイおよびショーン・エイカーと実施した研究によると、「ストレスは自分を消耗させる」と考える人は、ストレスに対して過剰に、または過少に反応する傾向が強い。対照的に、「ストレスにはプラスの効果がある」という考え方の持ち主は、ストレスに対するコルチゾール(ストレスホルモン)の反応がより穏やかになる。そしてストレス下にある時に、他者の意見を積極的に求め受け入れようとする(英語論文)。この姿勢は長期的な学習と成長に有益となる。
プレッシャーに対する自分の反応を認識して改善するには、マインドフルネス(瞑想などによって目の前の瞬間に意識を集中させること)や、センタリング(体の中心軸を意識する心身統一法)なども有効となる。ストレスやプレッシャーへの反応は、人それぞれだ。心臓がドキドキする、あるいは筋肉が硬直する人もいる。突発的な眠気に襲われる人も稀にいる。心理的反応はどうだろうか。すぐに決めつけをしてしまうのか、あるいは他者(または自分)を責めるタイプか。態度・行動面の反応についてはどうだろう。会話を突然打ち切るのか。急いで冷蔵庫に向かってしまうのか。
このような反応に気づけば、そこから解放され、より前向きにストレスと付き合おうという意識に変われる。