起業家と呼ばれる人たちは、新しいビジネスや組織のを生む際に、欠かせない存在である。では、他の人たちに比べどのような「違い」があるのだろうか。彼らの共通項を知ることで、組織内に埋もれている「起業家的な潜在力」を持つ人材に、目を向けることができるだろう。
起業家を駆逐しない組織

東出浩教(ひがしで・ひろのり)。
新しいビジネスや組織の誕生をリードするのは、言うまでもなく起業家である。起業家は、観察を繰り返し、経験を振り返り、直感を生かしながらビジネスの機会をとらえ、アーティスティックに、どのようなビジネスの“絵”を描いていくのかというビジョンを立てる。“絵”の実現を夢見る人たちが、起業家の周りに集い、やってみて、経験から学びながら事業を成長させていく。そしてビジネスの仕組みが定まり組織が大きくなるに従って、ものごとを効率的に転がしていくために、分析し計画をたて無駄なく実行に移していくことができる、そつがなくドライな人たちが増えてくる。
これらの異なったタイプの人たちが、適切に混ざり合っている分には問題はないが、多くの組織では、「そつがない」人たちが次第に優位になり、アーティスティックな人や、やってみる人を駆逐してしまう。これが終わりの始まりだ。破滅を避け、起業家的組織に変わっていくためには、「①手遅れになる前に、②少しずつ、③諦めずに」変革が進んでいかなくてはならない。そのためにも、アーティスト的な人材が、(現在は十分に生かされていない可能性も高い)自身の資質や行動パターンに気づき、静かな変革の主役になっていくことが大切であり、同時に活躍のための舞台が整えられる必要がある。