事業を成功裏に立ち上げ、急速に成長させていける起業家的な人材は、すべての多重知能をバランスよく平均的に(どれかが突出して高いわけではなく)開発していることに加えて、基本的に1人で居ることが嫌いで、人を巻き込むことが得意な人であることがわかっている(注4)。このタイプの人は、自分でチャンスの種を見つけ、基本的なコンセプトを固めたら、自らが顧客に向けて積極的に発信することに加えて、ヒトを巻き込み、育て、グループや組織として同じ方向を向いて走っていく体制を整え、急成長を達成する。
ここでも、前述の研究をもとに、起業志向が強いグループと弱いグループを比較してみる(図表2を参照)。前者が、多重知能全ての項目をバランスよく成長させている一方で、後者は全てにおいて低レベルにとどまっている。また、対人的知能、空間的知能においては、両者の差は相対的に大きい。多重知能は、基本的には、後天的に育てることができるものであるという前提に戻れば、自分の達成したいこと、信じることの実現のために、必死に考え、チャレンジし続ける人は、結果として、新しい事業で成功するための能力を伸ばしていることになる。

チャレンジ、幸福、パフォーマンス
同調査では、それぞれのグループの感じる幸福度も比較されている。起業志向の強いグループの47%が、自身は「幸せである」と明言する一方で、起業志向の低いグループでは、同比率は15%にとどまる。また、後者の17%が、自身は「不幸である」と明言している一方で、前者では5パーセントの人しか、不幸とは感じていない。3倍の人が幸せと感じ、1/3の人しか不幸と感じていないのである。心理学や社会学での研究をもとにすれば、高い幸せを感じている人ほど、創造的また効率的になり、異質なものに興味を持ち受け入れ、人にやさしくなり、自分は長生きする可能性が高まる。幸せな人が集まる企業などのコミュニティーは、創造的な発信ができ、実績も追いてくる確率が高いということだ。