起業家的な人が持つ、その他の特徴的な特質は、リスクを取ることができるという点、そして先行きが不確かな状況に置かれた時の耐性が強いということである。不確実性の中での事業には、失敗のリスクがつきものだ。そこでは、どの程度事業の失敗につながる出来事が起こる可能性があるのか、どのようにすればその可能性を減らすことができるか、起こってしまった場合にはどのような対処ができるか、を徹底的に考えぬいたうえで、“計算されたリスク”を取っていく必要がある。
しかし、起業家的組織においては、事業リスクの大半を引き受けるのは会社の仕事となるかたわら、事業に伴う知的財産権などは企業に帰属することになるし、企業内で事業に取り組む起業家的リーダーが、(成功した場合に)結果として得る金銭的見返りも非常に限定的である。
第1回で述べたように、日本の企業には「自ら起業する意思は低いが、企業の中で安定した生活や収入が確保されているという条件が整えば、自分の考えやプロジェクトを自ら実現してみたい」、つまりチャレンジしたいがリスクは取りたくないという従業員が多数存在している。このような人材に、起業家的にチャレンジする機会を与え、また各企業が培ってきた有形・無形の経営資源を組み合わせていくことができれば、そこに大きなチャンスが生まれてくる。
成功のための“多重知能”を育てる
事業の成否は、誰がやるのか、によって大きく左右される。われわれは、人生のさまざまな局面で、多くのチャレンジをすることにより、結果としての成功に近づいていくことができる。“多重知能”というコンセプト(注2)に基づき、成功できる起業家像を考えてみる。
多重知能とは、我々が持つ様々な潜在能力のことであり、問題解決や新しい何かを創造することに役立つ能力である。人は少なくとも9種類の能力や才能を持っており(注3)、後天的に開発できると言われているが、日本における通常の学校教育の中では積極的に評価されることはあまりない。