――これらの実験から、マネジャーはどんな教訓を学ぶべきでしょうか。
第1に、リーダーの選び方にもっと注意を払う必要があります。選定の基準をコンピタンスにすべきです。政治的な人脈とか、説得力とか、権威を感じさせる外見やしぐさに捕らわれてはいけません。そうしたものは役立つこともありますが、コンピタンスが最も重要です。採用と昇進の査定では、パフォーマンスを測る客観的な尺度を用いることが不可欠です。
第2に、型通りのヒエラルキーに潜む危険性に注意すべきです。重要な決断をする時には、可能な限り最善の情報に基づくほうがよいでしょう。そのために必要となるリーダーは、他のチームメンバーの専門知識を歓迎でき、しかもリーダー自身が意思決定者として最適ではない場合に、権力を他者と分担できる人です。
第3に、リーダーは「誰が何を知っているか」を把握することが重要です。たとえば、ここシリコンバレーの企業のように、組織が成長段階にある時には、現状を見失うことがよくあります。「どの課題が最も急を要するのか」、「その課題に関する深い知識を持っているのは誰か」について、2~3ヵ月ごとにチーム全体で吟味すべきです。
これはコンサルティングの仕事でも問題になることがあります。たとえば新規のクライアントを獲得した人が、求められる業務に最も精通しているわけでは必ずしもありません。誰が何を知っているかについて把握すると、より適任のリーダーを選べるようになります。プロジェクトの過程で新しい問題が出てくれば、その都度リーダーを変えるべきかもしれません。
――「ホラクラシー」のような自己管理型のチームは、どのような時に最もうまく機能しますか。
それに関しては興味深い研究を新たに実施しましたが、その結果を披露する準備はまだ整っていません。一連の調査から、私なりに理解した教訓はあります。「権力」と「適切なコンピタンス」を一致させるのが不可能な場合は、平等主義のチームは有効かもしれないということです。
――コンピタンスとはつまり、「遂行中の仕事に関する深い専門知識」を意味するのでしょうか。
そのとおりです。有能なリーダーはその深い知識によって、チームに新しいアイデアの探索とよりよいソリューションの提案を促すことができます。
――一流のビジネススクールは、どんな役割でも担える、いわば「リーダーという職能」の養成に重点を置きすぎていませんか。たとえば、科学・技術・工学・数学(STEM)分野で成長志向の企業が最も必要としている人材は、最高の専門的スキルを持つだけでなく、他者の強みを評価することにも秀でていなければならないようです。
もちろん、両方のスキルが重要です。でもたしかに、ゼネラリスト型のリーダーシップは過度に強調され、タスク固有のコンピタンスは軽視されがちなのかもしれませんね。それこそ本当のリスクです。
HBR.ORG原文:“Leadership Qualities” vs. Competence: Which Matters More? November 05, 2015
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サラ・クリフ(Sarah Cliffe)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のエグゼクティブ・エディター。