② マルチドメスティック企業(またはマルチナショナル企業)
このモデルは現地パートナーとのジョンイントベンチャーやライセンシーを通じて海外ビジネスを行う際によく見られる形態である。進出先マーケットのニーズに合うように製品やサービスのカスタマイゼーションが行われ、それに伴い海外オペレーションに大きな権限が移譲される。結果として本社からのコントロールは弱く、海外子会社は、国ごとに独立した法人のようになるため、現地社長はそのマーケットでの顔となる。
ビジネスモデルの現地化だけでなく、各国においてその市場の慣習に従い、一番適した方法で社員の採用や育成が行われるために、優秀な現地タレントを集める上では優位である。ナレッジは本社と現地子会社で独立して開発され、それぞれの組織に留まる。一方で、品質管理やブランドを世界的に統一しようとする際には、困難が付きまとう。国によって提供する商品やサービスが異なるということも起こるため、グローバルな顧客に対しては対応が難しい。
③ グローバル企業
権限は本社に集中しており、本社の戦略が世界に展開される形態である。多くのアメリカ企業がこの方法でグローバル化を進めている。製品やサービスに関しては、あくまでも本国の標準を守り、安易なカスタマイゼーションは行わない。それが原因で各国の売上が伸びなかったとしても、あくまでも、グローバルスタンダードを守ることが最優先である。オペレーションに関してもグローバルレベルでの全社最適が重要視され、海外現法固有のニーズは軽視される。あくまでも本社が方針と戦略を考え、海外現法はそれを実行する役割なのである。
この形態の場合、現法トップは本社から派遣された本国人リーダーであることが多く、彼らは本社のミッションをよく理解しているため、〇〇ウェイとか〇〇イズムと呼ばれる企業理念が日々の行動に染み付いている。そして、彼らの重要な責任の一つが、エバンジェリストとして企業理念を海外社員に伝えることなのである。この形態において、ナレッジは本社で開発され、必要に応じて海外現法に伝えられるが、ナレッジの管理は全て本社が行う。